アマゾンは5万人の新たな雇用創出を約束し、それを2つの都市に分けると決めていた。しかし、ニューヨーク市ロングアイランドシティに第2本社を作る計画は今年2月、政治的反発を理由として白紙となった。そのため本社があるシアトルは、米国で最もアマゾン従業員の密度が高い都市となった。
シアトルはもう、勝つことに慣れている。同市の昨年の経済成長率は、米国の中間都市の3倍である8.4%、インフレ抜きで考えても7%を達成している。同市にはアマゾンだけでなく、ボーイングやコストコ、ノードストローム、スターバックスなどの本社が置かれ、同地域にはマイクロソフトやジロー(Zillow)、エクスペディア、タブロー・ソフトウエアなどテック企業も軒を連ねている。
人口の流入数が流出数をここ最近上回っている米国都市は、シアトルを含めほんの一握りだ。同市には、高い教育を受けた若い労働者が多く供給されている。シアトルが、フォーブスの「ビジネスとキャリアに最適な都市ランキング」で2年連続首位を獲得した大きな理由の一つは、有能な労働力の存在にある。
しかし、シアトルがその強みの一部を失っている兆しもある。同市での生活やビジネスのコストは高く、特に住宅価格は近年、米国内でも特に急速に高騰している。また、収入の上昇率はここ数年平均以上の伸びを見せていたが、昨年は大きく停滞し、現在は国内平均よりも低い。
不動産企業クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドの立地選定専門家エリカ・ルーダーは、シアトルの成長は「もろ刃の剣」になり得ると語っている。高スキルの労働者が多いことは良いことだが、その多くは既に雇用されているため、人材へのアクセスが今後課題となるかもしれない。
ランキングの決定方法
フォーブスは21年にわたり、米大都市圏のビジネス環境を調査してきた。今年分析対象とされたのは米国の上位200の大都市で、仕事や収入、経済成長、ビジネスと生活のコスト、教育レベルなど14の測定基準が用いられた。またその他の要因として、人の移動、文化や余暇の機会、職場での寛容さに関する法律などが含まれている。
都市の規模としては、ニューヨーク市など人口が1400万人を超える都市から、26万8000人のメリーランド州ヘーガーズタウンまでさまざまだ。データの提供元は、ムーディーズ・アナリティクス(Moody’s Analytics)、スパーリングス・ベスト・プレーシズ(Sperling’s Best Places)、米国勢調査、クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド、ムーブメント・アドバンスメント・プロジェクト(Movement Advancement Project)だ。