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2019.11.05

「ユーチューバーではない」発言の真意──小嶋陽菜がVLOGに見出した可能性とは?

小嶋陽菜(写真=小田駿一)


──なぜ、VLOGを始めようと思ったのでしょうか?

実はもっと前から動画による情報発信はやってみたいと思っていました。動画は情報量が多く、伝えられることが増えますからね。

ですが日本では、すでに「動画コンテンツ=YouTube=企画モノ」というイメージと成功パターンが出来上がってしまっている。例えば、ドッキリや大食い、カバンの中身紹介などです。私も企画モノの動画は好きだし視聴するのですが、私が発信したい世界観とは少し違う。そのため、なかなか動画には着手できずにいました。

実はVLOGの存在自体は2016年頃から知っていました。初めてVLOGを見たのは、アメリカ最大級の野外音楽フェス「コーチェラ・フェスティバル」に行く準備をしているときのことです。現地の雰囲気を知りたくてユーチューブで動画を調べていたら、ブロガーやインフルエンサーたちが、コーチェラに行くまでの様子をVLOGの形式でアップしていたんです。

カメラ目線でガンガン喋るのではなく、音楽に合わせて自然に「これ着るよ」「こんなメイクするよ」と買い物中の行動や道のりを紹介してる。また、コーチェラは、砂漠地帯で行われるフェスなので、どこで撮っても絵になる。VLOGを初めて見たときに、「これだ!」と感じました。近い将来、絶対に日本でも人気が出るだろうな、と。

でも日本には、砂漠みたいな壮大なロケーションはなかなかないし、一定のクオリティの動画を更新し続けるのは難しい。制作は断念し、ときどきアメリカのVLOGをチェックするくらいでした。



AKB48として活動した経験が役に立っている

──VLOGの存在は知っていたけど、なかなか自分に合うスタイルが見つからなかった。

そうなんです。ただ、それから1年くらい経ち、2018年末頃に中国や韓国でもVLOGが流行り始めました。そのVLOGはアメリカのものとは少し違い、カフェに行く、家の中でくつろぐなど、日常の風景を切り取ったものが中心だったんです。音楽も、アメリカのEDM系とは違い、私の好きな「Lo-fi Hip Hop(ローファイ・ヒップホップ)」系が使われていた。この世界観なら私も定期的に発信できるのではと思い、VLOGにチャレンジすることにしました。

当時、日本ではまだVLOGについての情報はほとんどなかったと思います。でも、日本でも共感してもらえるはず、と確信していました。インスタ方面っていうのかな……、企画モノの動画は作れないけど、「動画を通じて発信したい」と思っている人たちは絶対にいる。そんな思いがあったんです。

試行錯誤を繰り返しながら、VLOGを初めてアップしたのは2019年5月。お仕事風景や、家の中、誕生日を祝って貰ったことなどをまとめています。

──なかなか先行事例が少ない中、小嶋さんはどのような点を意識して動画を制作しているのでしょうか?

動画の構成はあらかじめ頭の中にあります。素材を撮り溜めて、編集で答え合わせをしていく。そんな感覚に近いかもしれないですね。最初は編集も全て自分でやろうと思ってパソコンも買ったんですが、やはり大変で……(笑)。

VLOG関連のアプリも全て試しましたが、クオリティを追求するならまだまだスマホだけで完結させるのは難しいように感じています。

ですので、今は企画構成、撮影までは自分で行い、編集はプロに頼んでいます。と言っても、お任せしちゃうと完成形のイメージがズレてしまうので、真横で編集に立ち会い、「ここで音楽フェイドアウトさせてください」などと意見を言いながら、一緒に作り上げているんです。映像の演出は、AKB48としてたくさんライブに出ていた経験が役に立っているんじゃないかな、と個人的に思います。
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文=井澤梓 編集=新國翔大 写真=小田駿一

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