ビジネス

2019.11.01 07:30

ダイバーシティこそ競争力の源! Boxの「攻めの人材戦略」

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シリコンバレーだと多様な人材を集めるのは簡単だと思うかもしれないが、話はそう単純ではない。特にテクノロジー企業はその男性中心的でアグレッシブな企業風土が長らく問題視されてきた。いまでも採用や昇進、賃金などの面で男女差は大きく、セクハラ事件も絶えない。

そこでBoxは、性別や人種などによる賃金格差が生じないよう、ポジション(役職)に空きが発生すると、募集の段階であらかじめ給与水準を定めている。アメリカでは、応募者の経験やスキルに応じて給与交渉が行われるのが一般的。だが女性は男性に比べて交渉に消極的で、同じ職務内容であっても提示される給与額が男性より低い傾向にあることが、さまざまな調査で明らかになっている。そうした不平等を排除するために考えられた措置だ。

またディレクターやバイスプレジデントなど管理職を採用するときは、かならず性別や人種などが異なる複数の候補者のリストを用意し、インタビューするという。「適材適所」を原則としつつも、多様な人材の採用を促すための仕組みが導入されているのだ。実際、同社では責任あるポジションに多くの非白人や女性が就いている。

女性にとっての働きやすい職場づくりにも力を入れる。同社オフィスには授乳室があり、子連れ出社も可能。また仕事と家庭を両立しやすくするため、リモートワークにも柔軟に対応している。

さらに興味深いのが、会社公認の「従業員人材グループ」の存在だろう。社内には女性や黒人、同性愛者などの権利向上や啓蒙に取り組む有志の社員団体が11あり、さまざまな地域活動を展開している。こうしたいわば「社内NPO」に対して、会社は予算を割り当て、専門家を紹介するなどの支援を積極的に行っている。

このようにBoxでは不公平な格差や差別を是正すると同時に、社員一人ひとりが「自分らしさ」を肯定できる環境づくりに会社として取り組んでいる。

「守りの人材戦略」からの脱却

職場におけるダイバーシティを、単なる美辞麗句ではなく、革新的なサービスの開発につながる「攻めの人材戦略」と位置付けるBox。レヴィは「ダイバーシティは企業カルチャーにポジティブな影響を与え、イノベーションの創出につながりやすい」と主張する。

その言葉を裏付けるかのように、同社は基幹サービスである「Box」に加え、15年以降、「Box Governance」「Box Zones」「Box Relay」「Box Skills」など、毎年新しい製品をリリースしてきた。

レヴィは自信たっぷりに言う。

「性別・人種・年齢・出自・職業経験などが多様なメンバーからなるチームは、よいアイデアをどんどん出し、効果的にコラボレーションします。そのことは、さまざまな研究で裏付けられていますし、実際に我々の経験則にも合致するのです」


AARON LEVIE(アーロン・レヴィ)◎クラウドコンテンツ管理サービス大手Boxの共同創業者兼CEO。1984年生まれ。創業からわずか10年で、同社をニューヨーク証券取引所に上場。現在、世界で9万5000社超の顧客を抱える。

文=増谷 康 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN 真のインフルエンサーとは何だ?」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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