あぁ、痩せたい。人はなぜダイエットにハマるのか

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ただ、打算的に他者から評価される自分、すなわち「タグ付けしあう関係」もある程度引き受けなくてはなりません。私たち自身も知らず知らずのうちに、その関係の中で他人を評価する場合がありますし、そもそも生きている限り、他人からタグ付けされ、商品のように評価される局面は避けられません。そのような打算的な関係が社会を支えている側面も多々あるからです。

しかし人間関係が「タグ付けする関係」で満たされるのはあまりにも辛い。だからこそ、「タグ付けしあう関係」の中で傷ついた場合には、誰が自分とともにラインを描いてきてくれたのかを振り返り、それを大切にすることで自分を守ることができるでしょう。

承認が量で表される時代の中で

現代は、SNSの発展もあり、大量の他者から承認されることとが成功と結びつきやすい時代です。企業に就職せず、SNSを用いてインフルエンサーとして稼いでいけるようにもなりました。言い換えると、フォロワー数や、いいね!の数といった可視化された量的な承認がそのまま生きる糧となりうる時代に私たちは生きているといえるでしょう。

ところが、これはネットメディアに詳しい方に聞いたのですが、量によって、承認欲求を満たすサイクルにはまってしまうと、「いいね!」やフォロワー数を増やしやすい、怒りや恐怖を煽る炎上系のコンテンツばかりをアップするようになってしまい、その結果、心のバランスを崩す人々もいるようです。量の承認は快感をもたらしますが、このタイプの承認には際限がないことに目を向ける必要があるでしょう。

私たちは誰かに承認してもらわないと生きてゆくことができません。しかし量の承認が賞賛される今日、どんな承認を求めたらいいのか、という議論は今後さらに重要となるでしょう。

何度も言うように、他者の声に満たされた自分を作らないことはとても重要です。この社会において、やせることは他者承認とわかりやすく結びつくため、ダイエットを始めようとしている人も、続けている人も、その行為や欲求を止めることは難しいかもしれません。

しかし、なぜダイエットを始めようと思ったのか、他者の声に漂流しすぎていないだろうか、と自分を振り返ること。その「点検作業」があなたを孤独から救う重要なポイントになるはずです。

磯野真穂◎1999年、早稲田大学人間科学部スポーツ科学科卒業。オレゴン州立大学応用人類学修士課程修了後、早稲田大学文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、国際医療福祉大学大学院准教授。専門は文化人類学、医療人類学。

写真=曽川拓哉

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