今後の障壁
EVと同様、ソーラールーフもこれまでいくつかの障壁に直面してきた。しかし、同社の今年第3四半期のEV売り上げは期待を上回り、新車9万7000台を販売して63億ドル(約6900億円)に達した。EVを買う人が増える中、価格は下がり、技術は改善している。
こうした状況で現在、ソーラールーフのコンセプトには注目が集まっており、この分野も今後は障壁を乗り越えていかなければならない。太陽光関連企業はまず、屋根ふき事業で自社の存在を確立しつつ、適格な設置業者を探しコストの最小化を図らなければならない。屋根の設置を考えたときにまず頭に浮かぶのはエネルギー企業ではないため、テスラはソーラールーフを売り込み商品を設置する上で提携関係を結ぶ必要がある。
一方、テスラは自社が従来型の屋根ふき企業の競合企業になるとは考えておらず、ソーラーパネルに蓄電池を加えた商品よりもベターで環境に優しい代替策として自社の商品をマーケティングしている。ソーラータイルが8時間で設置できることも利点の一つだ。
先述の通り、同社のEV事業の成功はソーラーパネル事業の犠牲の上に実現されたものだ。再生可能エネルギーに特化したコンサルティング企業、ウッドマッケンジー・パワー・アンド・リニューアブルズ(Wood Mackenzie Power & Renewables)によると、米住宅用太陽光市場のうちテスラが設置したのはわずか6.3%だ。
ウッドマッキンジーの上級ソーラーアナリスト、オースティン・ぺレアは、テスラの店舗閉鎖に関する今年の報告書で「テスラは、住宅用太陽光分野で成長を追求することを基本的には諦めてしまった。新規顧客獲得のコストが高すぎると考えたからだ」と述べている。「テスラは太陽光事業が安定するまでの間、事業を破綻させず維持するためにむしろブランドの力や低コストの推薦方式に頼るだろう」
テスラは、同社のソーラーパネル事業が蓄電池事業の要だと論じるだろう。蓄電装置はEVだけでなく、公益事業や住宅用エネルギー貯蔵にも活用できる。住宅用電池は小さめのシステムで5〜10キロワットの電気を出力でき、車庫に設置されることが多い。公益事業用の電池は1メガワットで、蓄電設備開発業者が公益事業体に販売している。
マスクは手を広げ過ぎかもしれない。それでも彼は、拡張と効率改善が必要とされるソーラーパネルと蓄電池事業に今後も注力的に取り組むと述べている。これは、同社のソーラールーフ事業も同じだ。
限界は存在しない。このアイデアが軌道に乗れば、その恩恵が広く共有されるだろう。現在、計画停電や山火事のリスクにさらされている住宅の所有主は、特にその恩恵を受けるはずだ。