ビジネス

2019.10.31

働く価値観は一致するか。就活生と対話を重ねる「りたりこ」

長谷川敦弥


面接終了前に「フィードバックの時間」

就活で学生が戸惑うことのひとつは、特に内定が出なかったケースで「いかなる理由で不合格になったのかがわからない」ということだ。面接後、フィードバックを受けることは、まずない。

りたりこでは、面接終了前にフィードバックの時間を設け、それまでの対話を振り返り、新たな視点の提示などを行う。内定者に対しても、内定通知書を渡す際に、それまでの面接での評価点や懸念点を1時間ほどかけて伝えている。これによって、内定期間および入社後に、どのような力をつけていくべきかを考えるヒントになった、と内定者からは好評だ。

採用において、学生は明るく元気なキャラクターを演じようとする。それが、企業の望む人材であると思うからだ。対してりたりこの場合は、採用側がフラットに向き合うため、学生も「素」を出すことができる。そして、振り返りの機会もある。入社後のミスマッチが少ないであろうことは容易に理解できる。

拡大期にあり、新規事業の立ち上げも頻繁なりたりこでは部署の異動も多い。その際、一方的な通告によって異動が決まることはない。必ず、当人の意向を聞き、その異動がキャリア形成のためにどんな意味をもつのかなど、丁寧に対話をしたうえで決定される。これも働く価値観を尊重し、オーナーシップ(主体性)をもって仕事に取り組んでもらうための取り組みなのだろう。

今年度、りたりこは新卒と中途、合わせて約700人を採用した(アルバイトを含む)。まさに成長期、拡大期にある。社員数は3000人に近づき、人材マネジメントにおいても新たなフェーズでのきめ細やかさが求められる規模になった。

しかし、ここまで見てきたように「個」を尊重し、多様性を生かすことが企業のカルチャーとして定着している。それは規模が拡大しても揺るがない、組織の基盤といえるのではないか


長谷川敦弥◎1985年岐阜県生まれ。2008年名古屋大学理学部を卒業後、りたりこに新卒入社。営業職などを経て、09年、24歳で代表取締役社長に就任。16年に東証マザーズ上場、翌年に東証1部に市場変更を果たし、りたりこを障がい者支援分野で国内 最大手に成長させた。「世界経済フォーラム2017」でヤング・グローバル・リーダーズに選出された。

文=間杉俊彦 写真=能仁広之

この記事は 「Forbes JAPAN 「スポーツ × ビジネス」は、アイデアの宝庫だ!12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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