そんな言葉を漏らしたのは、世界に5億人超のユーザを抱えるDropboxのCEO、ドリュー・ハウストンだ。9月25日、同社は初となるユーザカンファレンスを、本社のあるアメリカ・サンフランシスコで開催した。
Dropboxといえば、ファイルや写真を簡単に共有できるストレージサービスのイメージが強いが、全ユーザーのうちの約8割がビジネス用途でも利用しているということもあり、同社は近年、ビジネス向けの機能開発を強化している。
今年8月の同社発表によれば、有料ユーザ数は1360万人。企業契約では40万以上のチームで利用されている。昨年3月、1兆円上場を果たして話題を集めたが、競合ひしめく業界でどのように差別化をしていくのか疑問の声もあがっていた。
フォルダの保管場所からAI搭載のワークスペースへ
「より多くの技術開発により、生産性を高めていく。そんな活動を何世紀にもわたって我々人類は行って来たが、もしかしたらその公式は限界を迎えたかもしれない。ある調査によると、情報を探したりメールでスケジュール調整をしたり、“仕事のための仕事”が我々の業務時間の60%以上を占めている」
ハウストンが講演で繰り返し訴えていたのは、増え過ぎたツールがいかに我々の時間を奪っているかであった。
「例えば、アインシュタインがいまの時代に生きていたら、まずメールを起動し、リンクトインのスカウトメールを削除し、いざ仕事にとりかかり何か革命的なアイデアを思いつきそうな瞬間には、Slackの通知に邪魔されるだろう」
そんな比喩で会場の笑いを誘ったが、仕事のための仕事が増え、集中を阻害されているというのは筆者の現実においても全く例外ではない。
このような仕事上のストレスを解消するため、Dropboxが取り組んだのが、スマートワークスペースの開発だ。
スマートワークスペースとは、仕事上のツールやコミュニケーションを一箇所に統合し、AIを活用することにより業務を効率的に進めるという同社が掲げているビジョンだ。
このワークスペース上では、グーグル ドキュメントなどの他社ツールもDropbox内から直接立ち上げることが可能になっている。これによりツール間を行き来することなく作業に集中できる。
また、ローカルとは分断されていたクラウド専用ツールも一カ所で整理ができるため、仕事上で必要なすべてのファイルを一箇所で管理することも可能。SlackやZoomなどのコミュニケーションツールとの連携もされているので、これも行き来することなくチーム内でのやりとりができる。