これらの統合により、検索機能も一段と便利になった。SlackであればSlack内で、グーグルドライブ内であればグーグルドライブ内で検索をかけなければならなかったのが、一つの検索ボックスで、統合している全てのツールを対象に目的のデータを探し出すことができるようになった。
画像のようにワークスペースも2カラム制になっており、左カラムでプロジェクトや関わっている人物、ファイル別に業務が整理できるなど、全てのタスクに対し、必要な切り口で管理がしやすく改良されている。
これらの機能は今年6月に発表されたデスクトップアプリのプレビュー版で披露されていたが、今回、AIの技術により、画像検索が大きく進化した。
例えばファイル名が思い出せないとある「服」の画像を検索したければ、「服」と検索すれば、AIが服と認識された画像のみを抽出することができる。連携している全ツールが検索対象となるため、Slackやメールなど、どこで共有されたか分からなくなってしまった画像も一発で見つけ出せる。
AIがより有用になるのが、通知機能だ。メニューバーにあるアイコンをクリックすれば、ユーザがいま必要としているファイルを示してくれる。カレンダーと連携すれば直近のミーティングに必要な資料を提示してくれたり、進行中のプロジェクトの重要なアップデートを知らせてくれたりする。休暇明けの大量の連絡事項も、AIの力を借りれば必要なものだけ通知を受けることができるという。
今回のアップデートはDropboxの10年以上の歴史でもっとも大きい変更だというが、なぜこのスマートワークスペースという構想にたどり着いたのか。
ハウストンは遡ること数年前、「USBを持ち歩かずに済む世界」を実現するという創業当時のミッションの完了を感じたという。その世界は、クラウドの普及により今や当たり前となった。
Dropboxとして次に何に取り組めば良いか考えている時、SpaceX社のエンジニアとの出会い、ロケットや宇宙開発という壮大なミッションに突き進む彼に嫉妬したという。
ハウストンは彼の仕事に興味を持ち、質問攻めにした。毎日どのような仕事をしているのか。どんなツールを使っているのか。人を火星に連れて行くには一体なにが必要なのか。そして、日々どんな課題があるのか。
その答えは意外なものだった。宇宙開発をしているエンジニアの我々と変わらず、日々の仕事や課題を構成しているのは、膨大な量のメールや山のようなファイルであった。
宇宙に目を向けている世界屈指の人材も、便利を追求し増え過ぎたツールに多くの時間を奪われている。この気付きを得て、スマートワークスペースの構想にたどり着いた。そのタイミングでDropboxは、会社のミッションを「スマートな働き方をデザインすること」に変更している。