ビジネス

2019.10.30

異業種の融合──食とスポーツが生み出した、新たなパートナーシップの形

(左)フェンウェイ スポーツ グループのフェンウェイ スポーツ マネージメント(FSM)でアジア事業戦略担当兼広報を務める吉村幹生氏、(右)日本ハム執行役員 スポーツコミュニティ部 部長の前田啓次氏


──パートナーシップ締結に至るまでは最初から全てが上手くいったのではなく、社内を含めて説得していくのにご苦労もあったかと思いますがそのあたりも伺えればと思います。最初、社内の反応というのはいかがでしたか?

前田:実は、当初は否定的な声も多く、社内コンセンサスを取ることは難航したんです。ちょうどボールパークの建設を決めた直後で、野球にしっかり投資をしていこうと打ち出したあとに「何故リバプールFCに?」というタイミングの問題もありました。

私達は「海外事業におけるコーポレートブランドの浸透のため」と話していましたが、「海外事業はまだそのレベルに達していない」という声もありました。私達の海外事業ではBtoCの消費者向けではなくBtoBの企業間向けの商品が中心のため、今本当に必要なのかと問われたのです。ビッグプレイヤーを活用して、コーポレートブランドを浸透させる必要性を理解してくれる人もいましたが、時期尚早ではないかという意見も多数ありました。

そんな時、吉村さんが食品メーカーと一緒にCSR活動をやりたいという思いを語ってくれたというわけです。

吉村:リバプールFCは地元リバプールの住民に127年間支えられてきていますが、試合当日には世界中から多くのサポーターが訪れ、盛り上がりを生み出します。一方で、お祭り騒ぎの賑わいのために、住民には迷惑を掛けてしまうこともあります。そのため、普段から支えて頂いている地域に対して、私達も支え返さないといけないという意識が強くあるのです。

そこで、我々が取り組み始めたのがフードバンクという活動です。


@リバプールFC

簡単に言いますと、フードバンクは明日、明後日食べていく物が家にないような局面にいる人々を支えるプログラムです。スタジアムに来場するお客さんに缶詰食品を持ってきていただき、それを集めて届けることで認知活動も行っています。それでも食は足りていない状況が常に続いています。私達は野菜を作ったり、牛や豚を育てたりしているわけではなく、地域のサッカークラブに過ぎません。

ですから、食のエキスパートである日本ハムは是非ともパートナー企業として仲間になってほしいという思いがありました。いずれは日本ハムさんの若手社員の皆さんにもフードバンクの取り組みに参加いただき、交流の機会も作っていければと思っています。
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文=新川諒 人物写真=小田駿一

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