マイクロソフトが米国防総省の「1兆円クラウド」受注の舞台裏

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米国防総省が推進する「共同防衛インフラ事業(JEDI)」に関する入札で、マイクロソフトが総額100億ドル(約1兆円)に及ぶ受注を獲得した。契約期間は10年間で、マイクロソフトは軍事向けのクラウドのストレージシステムを構築する。

今回の入札においては、米中央情報局(CIA)にAWSを提供中のアマゾンが有望視されていたが、国防総省は最終的にマイクロソフトを選んだ形だ。JEDIは長年、古びたまま放置されていた米国軍のコンピュータネットワークを刷新するもので、現場の兵士から戦闘機まで、軍のあらゆるリソースを単一のクラウドで管理可能にする。

証券会社Wedbushのアナリスト、ダン・アイブスは顧客向けの資料で、今回の契約獲得はマイクロソフトに100億ドルの価値をもたらすと述べた。さらに、マイクロソフトはクラウド市場で、アマゾンとの戦いを有利に進められるようになると指摘した。

ただし、今回の契約はセグメントを区切ったものであり、アマゾンが完全に戦いに破れた訳ではない。ワシントンDCのシンクタンクLexington InstituteのバイスプレジデントのDaniel Gouréは「国防総省は2次的なリソースとしてアマゾンを採用する可能性もある」と述べた。

米国のトランプ大統領は今回の入札を巡り、アマゾンの競合企業から不満が噴出していると公の場で述べていた。トランプは以前から、ワシントン・ポストの社主でもあるアマゾンCEOのジェフ・ベゾスと対立しており、トランプの意思が入札結果に影響を与えたとの見方もある。

また、一部のアナリストからは、国防総省がCIAと同じクラウド企業を選ぶと、セキュリティ上の懸念が生じるとの声もあがっていた。

入札にはIBMとオラクルも参加したが、国防総省は今年4月時点で、この2社が重要機密の取り扱いに必要なセキュリティレベルを満たしていないとして、入札から除外した。一方で、グーグルは昨年の段階で、社内からの抗議の声の高まりを受けて、入札への参加を取りやめていた。

ただし、マイクロソフトの社内からも同様の反発が生じる可能性はある。マイクロソフトは米国陸軍にARグラスの「ホロレンズ」を8億4000万ドル(約913億円)で提供する契約を結んだが、今年2月に同社の従業員らは、この契約を破棄するよう求めていた。

編集=上田裕資

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