ビジネス

2019.10.29

効果的な経営理念の作成に必要な「見直し」と「振り返り」の視点|面白法人カヤック 柳澤大輔

株式会社カヤックCEO 柳澤大輔

「日本的面白コンテンツ事業」を業務内容として掲げ、ソーシャルゲーム事業、ゲーム音楽事業、ウェディング事業、葬儀事業など、多岐にわたるビジネスで話題を呼び続けている「面白法人カヤック」こと株式会社カヤック。

同社CEO・柳澤大輔氏に起業家としての心構えや、ベンチャー企業の組織づくりについてドリームインキュベータの小縣拓馬が聞いた。(全5話)

※本記事は2017年9月に実施したインタビュー内容を基に作成しております。


役に立つ経営理念を作るには「見直し」「振り返り」が不可欠

──御社は経営理念を非常に大切にされている印象です。「これから経営理念を考えたい」というベンチャー企業は、どういう点に注意して作るべきでしょうか?

注意すべき点は2つです。

まず、「経営理念は毎年見直した方がいい」ということ。初めからいきなり凄く使える経営理念はできません。

「こういう会社や変化、社会を作りたい」という理想に対して物差しになるのが経営理念なので、使えない経営理念、即ち「なんとなく言っているけれど、何の役にも立たない経営理念」だと何の意味もないんです。

我々も「面白法人」は創業時にぱっと出したんですが、経営理念は何度も何度も見直して、6、7年経ってやっと今の形になりました。だから「見直す」という覚悟でやった方がいいかなと思います。

2つ目は、「困った時に役に立ったか」を振り返るということです。

「困った時に、理念を思い出して乗り切れた体験」が出てこないような経営理念は、多分あまり役に立っていません。事業をどう進めていくべきか迷った時に理念を思い出して、「ああ、理念に従えばこの事業は進めるべきなんだ」という風に役立てられるものでないと意味がありません。なので、そのような役に立っていない理念は何度でも変えた方がいいと思いますね。



──「経営理念が役に立っているかどうか」という視点は新鮮です。御社の経営理念は「つくる人を増やす」ですが、その理念に関しても、今でも振り返りをしておられるのでしょうか?

我々は評価に必ず入れていますし、全員で振り返るようにしています。

「つくる人を増やす」を作って10年ぐらい経つので、そろそろ古くなってきて見直せと言われるんですが(笑)。もしかしたら次の経営者にバトンタッチする時にそれも託すのかもしれません。時代とともにきっと変わるでしょうから。

──急成長して上場に至る10年間の様々な局面の中では、この理念が役に立ってきたのだと思います。今後、会社としてのフェーズの変化に伴って、理念の変化の必要性を感じている部分はありますか?

現状だと、なかなかこれ以上のものが見つからないのが正直な所ですね。

あえて言うならば、「増やす」という言葉は変えてもいいのかもしれないと思うときもあります。

会社は普通「会社を大きくする」ことにプライオリティーが置かれている訳ですが、我々のようなクリエイター中心の会社は、規模を大きくすることよりも研究者やアーティストのように「まだ誰も見たことがないものを発見すること」にプライオリティを置きがちです。なので、会社を成長させる意識付けのためにも、あえて「増やす」という言葉を入れているんです。

しかしながら、現在は上場も経て、昔と比べて色々な職種の人が増えてきています。なので、ことさら意識しなくても「会社を大きくする」というメカニズムに燃える人達が増えてきているんですよね。

ですから、「増やす」という言葉の必要性に変化が来ているのかもしれません。例えば、「つくる人を『つくる』」だと昔は成長への意識付けが弱かったのですが、今なら十分機能するかもしれません。
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文=小縣拓馬 提供元=Venture Navi powered by ドリームインキュベータ

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