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2019.11.03

寄付では世界を変えられない3つの理由

Debra L Rothenberg/WireImage


慈善事業の大部分は、大学やオペラ、バレエ、大きな美術館に充てられる。芸術や教育が素晴らしく、重要だというのは事実だが、こうした寄付の大部分は、地球上で最も裕福な国の既に比較的裕福な組織に与えられている。世界の富のうち慈善活動に注がれる資金はそもそも少ない上に慈善事業の大部分は革新的な変革をもたらすものではないため、これは実に小さな部分であることが分かる。

3. 慈善家は解決策より問題への投資が多い

ほとんどの場合、慈善活動の予算は資産全体のほんの一部でしかない。米国では財団の場合、毎年リソースの最低5%を寄付することが法律で義務付けられている。しかし、投資に回されることが多い残りのリソースについては財団の理念と関連しているべきという要件がない。

つまり、財団は活動の95%を財団の理念に全く反していることに充てることが許されているのだ。これは、他のほとんどのセクターで許されないような非常に信じ難い税金・管理の抜け穴だ。

例えば米石油大手のシェブロンの社長が95%の時間をゴルフに費やし、5%の時間で石油の採掘に取り組んだとしよう。あるいは9時から5時までの事務職の人が1日24分しか職場にいないとする。そうなれば、2人とも解雇されるのではないだろうか?

これは、社会問題に向けられるべき金が驚くほど非効率的に使用されていることだけでなく、財団が“知らないうちに”、慈善事業として解決策を提供するよりはるかに多くの資金を問題に投資できるというさらに深刻な問題を示している。

これは最近の問題ではない。米紙ロサンゼルス・タイムズははるか昔の2007年、ビル&メリンダ・ゲイツ財団について、知られざる慈善事業の落とし穴を鮮明に描き出す記事シリーズをいくつか掲載した。

その最初の記事で同紙は、同財団の慈善活動とニジェール川デルタ地帯における投資の相反する影響について次のように分析した。

「ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、ニジェール川デルタ地帯を含めた世界規模でのポリオとはしかの予防接種や研究に2億1800万ドル(約240億円)を費やしている。しかしタイムズ紙は、同財団が健康を守るための予防接種に資金提供をするのと同時に、エニ(Eni)やロイヤル・ダッチ・シェル、エクソンモービル、シェブロン、トタルに4億2300万ドル(約460億円)の投資をしていたことを発見している。これらは(…)デルタ地帯全体を汚染する石油開発の大半を引き起こしている企業だ」

これはまるで、ビル&メリンダ・ゲイツ財団が自動車企業を立ち上げ、その後2台のブルドーザーを送って組み立てラインから出てきた車を全て破壊するようなものだ。これこそ、全ての慈善団体が毎日行っていることだ。こうした団体は抽出型経済への投資で金を稼ぎ、95%の投資による間違いを修正することに5%を寄付している。
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翻訳・編集=出田静

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