キャッシュレス推進のいま、改めて「お金」の未来を考える。heyがアートイベントに込めた思い

hey代表の佐藤裕介



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大きな社会の流れと、無料で導入できる。この一見デメリットがない活動を通じて、何か大事なものが収奪されているのではないか。そういう問題提起が店舗側から生まれてきていて、ここ数カ月でツイッターに投稿されたり、ブログ記事があがったりしている。

私たちもお店のお金まわりに関わる事業をやっていて。店舗の売上金の大部分は一度、私たちの口座に落ちるわけです。その状態を踏まえた上で、何ができれば店舗側のお金にまつわる摩擦係数をなくしてあげられるのか。僕だけでなく、松本を中心としたメンバーたちはずっとそういったことを考えてきたからこそ、この企画が生まれたと思うんです。

デジタルデータを資産として活用できる仕組みができ、今後重要性が増していくにも関わらず、そのデータを生み出した本人の想像も及ばない範囲で利用されていく状態。

そんな現状を自分たちはどう捉えるべきか。いつか大きな問題になってくるからこそ、一度立ち止まって考える機会を設けるべきだと感じました。

──hey 単体ではなく、アーティストと作品を共創していく点が面白いと感じました。なぜ、アートだったのでしょうか?

もともと、私は検索エンジンが大好きでした。好きが高じてGoogleに入社までしてしまった。僕は匿名化された検索クエリデータをボーッと眺めているのが好きでした。その時間は、確かにこの世界には自分以外の自立した意思を持った他者がいるんだと信じられたんです。

この話を弊社のコーポレート写真などを撮影してくれている女性にしたら、「その画面は芸術と一緒の機能がある」と言われて。最初は何のことか分からなかったのですが、世界の見方を変えるものがアートなんだと。僕のケースであれば他者のリアリティーを、その画面を通じて得られるようになったりする。パーセプションを変えるということがアートの力なんだなと思ったんです。

だからこそ今回、松本が「お金について立ち止まって、新しい考えや見方を提示したい」と言ってくれたときに、“アート”という切り口は面白そうだと思いました。また、アーティストの人たちの力を借りて、作品を共創していくことは可能性があるな、と。

──“お金”をテーマにしたアートイベントはあまり聞いたことがないので、非常に楽しみです。

私たちも、初めてこうしたイベントを開催するので未知数ではあるのですが非常に楽しみです。当然、ビジネスとして投資家のお金を使って大手を振って開催できるほどの会社ではないので、今回は僕と佐俣奈緒子が個人的に出資し、またコンセプトに共感いただいたスポンサーの方々に出資していただき、形にすることができました。

フィジカルなイベントなので、ある程度のインパクトはつくらないといけないと思います。難しい話を講演形式で話してもよく分からないと思うので、肉感的な内容として作品の展示がある。アーティストとの作品づくりを通して、お金、価値の交換に対する新しい世界の見え方を提示することで、どのような影響が与えられるのか。とても楽しみです。

文=新國翔大 人物写真=小田駿一

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