世界大手がAI企業に続々投資 重宝されはじめる「ファッションテック」

(c)Heuritech

世界を代表するファッション企業が、ここ数年、テクノロジーへの投資を加速させている。アクセラレーターやインキュベーターを通じた間接的な投資、またパートナーとしての提携や直接的な資金提供など、その方法は実に多岐にわたっている。その投資対象のなかには、AIやビッグデータを武器とするファッションベンチャー、およびスタートアップも少なくない。

2018年にH&Mが1300万ドルの投資を行ったのは、英国拠点のベンチャー企業Threadだ。同社はファッションECを運営しているスタートアップで、人工知能「Thimble」を活用したコーディネイト&ショッピング支援に強み持つ。ユーザーが、提示されたさまざまなスタイルの写真から好みのものを選び、年齢やサイズ、価格帯などの情報を提供すると、アルゴリズムがパーソナライズされた推薦情報を提供してくれるという仕組みだ。

現在、Threadのユーザー数は100万人ほどとなっているが、そのうち25%が「Threadのみ」で買い物をするという。過去3年間では、売り上げが約79%増加と順調に成長を続けている(補足までに、利用者層としては25~55歳の男性に偏りを見せているという。やはり男性は服を選ぶのが苦手なのだろうか)。

ラグジュアリー大手の動きは?

LVMHが運営する「LVMH Luxury Lab」では、選定企業のひとつとして、AI肌解析ソリューションを提供するlululabを選出した。LVMH Luxury Labは、全世界のベンチャーを対象に、LVMHの潜在的なパートナーとなりうる企業を選定・評価するプログラムだ。lululabは「LUMINI」というAIベースの肌診断端末およびシステムを開発している。

興味深いのは、LVMHとlululabの出会いだ。Lululabは製品を正式にローンチする以前、ラスベガスで開催されているコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)に出展。それをみたLVMH側がアポを取り付け、CTOが直接オフィスに訪ねてきたという。テクノロジーに関してLVMHが非常に高いアンテナを張っていることを伺わせるエピソードである。

LVMHが2017年からイノベーションアワードを通じて目をつけていたベンチャー企業Heuritechも、今年9月に約4.7億円の資金調達を成功させている。仏パリを拠点とする同社は、自然言語処理技術や画像認識技術でウェブ上の画像やテキストを分析し、ファッションや美容分野のトレンドをクライアントに提供する。9月の資金調達ラウンドには、ジミー チュウのピア・デニスCEOも参加しているという。

テクノロジーとの融合は、ファッションをどのように発展させるのか。大手企業の投資の動向からは、その行方が見えてくるかもしれない。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河 鐘基

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