リブラは安全資産のバスケットに裏づけられており、世界中で使用できるように設計されている。議員らが事前に質問を準備できるよう、証言内容は公聴会に先立って下院に提出された。
各国の政府や中央銀行がリブラの発行が及ぼす影響を警戒する中、ザッカーバーグの発言に注目が集まったが、その内容は想定の域を出るものではなかった。しかし、公聴会に先立ち、リブラの発行阻止を目的とした3つの法案が下院に提出されたことを受け、フェイスブックが論点を変えた点は興味深い。
証言は、イントロダクション、リブラプロジェクトの概要、差別との闘い、多様性へのコミットメント、結論、という5つのセクションに分かれている。
イントロダクションで、ザッカーバーグは中国が同様の仮想通貨を発行し、国営企業のコンソーシアムを介して流通させる予定であると述べ、リブラはその対抗馬であると位置づけた。
これまで、フェイスブックはリブラが国際通貨のバスケットに裏づけられ、リブラの発行・管理を行う協会に参加企業が共同出資する点を強調していたが、公聴会では中国の脅威を持ち出し、政治的観点からリブラの必要性に理解を求めた。
「リブラは主にドルに裏づけられるため、米国が金融分野のリーダーとしての地位を強めると同時に、民主主義的な価値観の普及につながる。米国がイノベーションを起こさなければ、金融分野における主導的な地位は保証されない」とザッカーバーグは述べた。
多様性や公民権に焦点を当てたことも注目に値する。これらのテーマは一見、仮想通貨と無縁に思えるが、リブラは銀行口座を開設できない層も利用することができる。ザッカーバーグはイントロダクションの最後で、「私は人々の生活を変えることができる立場にあることを幸せに思う」と述べ、議員や有権者の感情に訴えた。
米国のイノベーションの重要性
2つ目のセクションは、リブラやリブラ協会、デジタルウォレット「Calibra」などの事柄に関する説明だった。7月にリブラの責任者であるデービッド・マーカスが下院で証言して以降、4名の議員がリブラ協会の参加企業に書簡を送り、協会からの脱退を要請した。
その結果、ペイパルやマスターカード、ビザなど主要金融企業の大半が離脱した。これに対し、サウスダコタ州選出のマイク・ラウンズ上院議員は「議員らによる脅しは残念だ」と述べ、リブラへの支持を表明した。