こう言うと「初見では遊びに行きづらい街だな」と思うかもしれない。それはある意味間違っていない。1回飲みに行って最高の思い出になるようなエンタメ性が高い店は歌舞伎町には少ない。人間関係を構築していくこと、職種・性別を気にしない一人の人間として扱われるようなコミュニティが沢山あることこそが歌舞伎町の魅力なのだ。
4月になると新しい客引きが増えて、街がポイ捨てのゴミで汚れる。しかし冬になるとゴミの量は減る。そうやって彼らも街の住人になっていくのだ。
2018年のハロウィン、渋谷では車をひっくり返すような暴動が起きた。もし、同じような状況が歌舞伎町で起きたら、暴動になる前に道で騒ぎだしたら客引き達は営業妨害だと言うだろう。客引きは違法行為だ。そうあるにも関わらず、その存在は歌舞伎町の安全性をある意味で守る存在なのだ。
自分のお店の前で暴れていればお店の人は注意する。実際に我々のお店で問題が起きても、近所のお店の人やお客様の協力で解決することがほとんどだ。みんな自分事のように協力してくれる。
そうやって、自分たちの街だと感じるような比較的長く歌舞伎町で働いている人や、お客様が街中にいて自分たちのテリトリーを守るのだ。
もし、毎日のように路上に居る客引きが居なくなったら? もし、路面店が、日々変わるバイトで回すチェーン店になったら?
街の魅力とはなにか
チェーン店が悪いという訳ではない。しかし高騰する家賃に耐えられるお店は、大概大手資本のチェーン店になってしまう。実際に一番人が集まる歌舞伎町1丁目の路面店にはチェーン店が増えている。
そうなると、どこの街も同じような景色にならざるを得ない。そんな街に特別な魅力があるだろうか?
繁華街は、重要な観光資源だと思う。そんな観光資源を作るのは、街のモラルと文化を愛している、そこで働く人たちだ。
楽しい街にしよう。と声高に叫ぶ、ビルオーナーたちのテナントには大体チェーン店が入っている。どこかで見たことがあるような街を歌舞伎町に敢えて作る必要はあるのだろうか。
戦後の焼け野原から、街の商売人たちの力で唯一無二の存在になった歌舞伎町。人は入れ替わりながらも過去と未来が融合しまくっている独特の猥雑な雰囲気こそが歌舞伎町の魅力なのではないだろうか?
魅力もなく安全性をも欠いた街にはしたくない。
「安全だけど安心はしない、ワクワクする街でありたい」
これも城さんの言葉だ。そんな特別な魅力のある街であることを、私は引き継いでいきたい。