マグワイア国家情報長官代行にあてた書簡には、上院民主党院内総務のチャック・シューマー議員と、共和党のトム・コットン議員らが署名した。TikTokは北京本拠の中国企業バイトダンスが運営するアプリであり、議員らは中国政府が同社に米国民のデータ開示を強制することを懸念している。
さらに、TikTokが掲載コンテンツを検閲し、中国政府の意向に沿わない動画を排除する可能性も指摘された。その例として、香港の民主化デモの模様を収めた動画や、天安門事件に関するもの、新疆ウイグル自治区の問題や台湾の主権に絡むコンテンツが挙げられた。
TikTokでシェアされる動画の大半は、ユーザーらが作成した他愛もないジョークやコメディ系のものだ。このアプリはアップルのアップルストアで3番目にダウンロード数が多く、特に10代からの支持が高い。
フォーブスの取材にTikTokの広報担当は、「議員らの要請の詳細を把握していない」と述べ、「当社は米国市民の信頼を裏切らない、責任ある企業として行動する」と話した。さらに、米国議会や規制当局には協力していくと述べた。
今回の書簡で議員らは「米国だけで1億1000件以上のダウンロード数を記録したTikTokは、対諜報活動上の脅威をもたらすツールとして、無視できない」と指摘した。
米国企業は巨大な中国市場に魅力を感じる一方で、アメリカの言論の自由をどう維持するかという課題に直面している。先日はNBA幹部による、香港の民主化デモを支持する発言が中国政府の怒りを買い、NBAが公式に謝罪したことが騒動に発展した。
米国の政府関係者は、中国企業が米国経済に与える影響の高まりに、危機感を募らせている。TikTokを米国の国家の安全保障上の脅威に位置づける動きは、米国が中国のファーウェイに禁輸措置を下した流れとも重なる。
トランプ大統領が中国との貿易交渉を進める一方で、米国政府は対中投資の制限を検討中であるとの報道もある。TikTokがコンテンツの検閲を行っているとの指摘は、以前からあがっていたが、先日はイスラム過激派のISISがTikTokにプロパガンダ動画を掲載していたことが報じられた。