『トム・ソーヤーの冒険』から得たヒント ANAが地方に高校生を送る理由

写真提供=ANA

今からさかのぼること約1300年前。701年に文武天皇により「大宝律令」が制定されました。この中にある「学令」が、日本で初めて学校教育について定めた制度といわれています。
 
現在、私たちは教育について、再び大きな転換期を迎えています。 文部科学省は「学習指導要領」を約10年ぶりに改定し、2020年度からは小学校におけるプログラミング教育を必修化。小学校中学年から外国語教育を導入することなどを決めました。

こうした動きに伴い、ある意外な企業が教育分野にチャレンジしています。航空会社のANAです。飛行機で有名な会社がなぜ教育に注目しているのでしょうか。地域と連携した体験型教育プロジェクトを担当している2人に話を聞きました。

人口減少、少子高齢化の波は止められない
 

左から:ANAの大下さん、中:新富町のお茶農家の安積さん、右:ANA津田さん。安積さんの手作りのポスターで迎えられた図

ANAは2016年4月に創設した新組織「デジタル・デザイン・ラボ(以下、DD-Lab)」で、地域と連携した体験型教育プロジェクトを推進しています。DD-Labには、2019年8月現在で14名が所属しており、各自が「世界をつなぐ」という理念の下で自立したプロジェクトに取り組んでいます。
 
この背景の一つには、人口減少という日本の課題があります。今後飛行機の利用者が減少し、例えば宮崎ー東京間ではプロペラ機しか飛ばなくなるかもしれない、という予測もあるといいます。
 
ただ、DD-Labは、人口減少を食い止めることではなく、地域と都会をつなぐ関係人口を増やすことに注目しました。関係人口が増えれば、第二の故郷として地方を訪問する人が増え、業界全体の底上げになると考えたのです。
 
その関係人口を生み出す手段として推進しているのが、地方での体験型教育プロジェクトです。ではなぜANAは学びの場を地方に求めたのでしょうか。 

地域が秘めている学びのフィールドの可能性


新富町農家に説明を受ける高校生

「東京では自然に触れる機会が少なく、体験を通じた学びをえにくいと感じます。例えば、小豆島のヤマロク醤油さんの蔵で日本で残り数件しか作っていない木樽仕込みを見せてもらいました。中には100年以上使われている樽もあり、蔵の中は長年の努力の末住み着いた菌の独特の香りで漂っていました。思いとともに受け継がれてきた伝統技法が多く残る地域の方が、学びのフィールドが大きいのではないかと思っています」
 
こう答えるのは、プロジェクトのきっかけをつくったDD-Labの大下眞央さんです。大下さんは、東京大学で始まったイノベーション教育プログラムのイベントに参加したことが大きな気づきにつながりました。育ってきた環境や背景が異なる東京の学生と地方の学生が活発に交流しているのを見て、地域から都市に人が来るだけではなく、都市から地方に行く人が増えれば、イノベーションが起こる可能性がより高くなると感じたと話します。
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