Close RECOMMEND

チャーミングケアで広げる家族の視点


奥井さんは、重度の心身重症障害を持つお子さんを育てている。もちろん出産も大変だったが、その際に起こった障害を家族が受け入れることのほうがとても大変だったと語ってくれた。

看護師たちも、正直どう関わっていいのか戸惑いが見て取れたし、産後ケアといっても健常児とは明らかに違いがあるので、母親自身に対するケアは、ほぼ後回しになったというのが実情だったという。

岩倉さんは、2人のお子さんを出産しているが、2人とも出産時に産後うつを経験していて、そこから抜け出すための試行錯誤や、自分自身との葛藤について語ってくれた。

総じて一致したのは、産後ケアとはいったい誰の管轄の仕事なのかという疑問だった。私たち母親が困ったとき、誰に声をあげたらいいのか──。そこすらわからなかったのだ。

そして、新生児訪問で助産師が来訪したという私のケースが稀ではないかという意見も上がった。保健師が来訪して調査的なやりとりは行われるが、助産師が行う母親に対するケアや子どもに対するケアは受けられないというのだ。

ロスジェネに「産後うつ」が多い理由


勉強会の様子

そこで私は、議題に上がった「助産師」について知るために、神戸市で行われていた助産師の勉強会に参加させてもらうことにした。亀田マタニティ・レディースクリニックで行われたその集いは、20人前後の助産師たちが集まり意見交換などをする場だった。

そこではっきりしたのは、産む側は「継続的なケアを求めている」にもかかわらず、それをできる人の数が圧倒的に足りていないという点だった。

2006年ごろから国の施策により、退院制度が早くなり、産科医の数もずっと減少傾向にある。

看護師の数も同様、2018年度に実施された看護制度の変更により、1人で患者を7人受け持っていたところが10人となるほど減少しているのが現状だ。

そして、自治体によっては、産後新生児訪問が希望者や規定の人のみが対象になっている場合もあり、産後ケアについて、実際のところ全員が受けられる状況ではなくなってきている。

そのため、市町村やかかりつけなどへの連携も「産後ケア」の部分だけではなかなか難しい。よほどの症状であったり、ケアを受けるに該当する人のみが話を繋いでもらうのがベターとなってきている。

助産師+行政が連携して行うケアの仕組みが出来上がっているとは言いがたく、開業助産師になってもビジネス的ノウハウを持ち合わせているわけではないので、継続的支援のビジネスモデル化が難しいのが現状だということがわかった。

この勉強会の主催者のひとりであるNPO法人Umiのいえの齋藤麻紀子さんの言葉が印象的だった。

「最近は、『助産師迷子』が増えてきています。私たちも本来の仕事がしたい。だけどそこには人の命を預かるという大きな重責があるので、やりたいだけでは勤まらず『覚悟」が必要です」

そして亀田先生のこんな言葉にもうなづいた。

「子育てが大変な時代だなとも感じます。家族間のコミュニケーションが十分でないことも起因してか、産後うつになるお母さんが全体の4割以上になってきている。

やはり、妊娠中から適切なアドバイスがもらえなかったり、出産年齢が30代後半から40代の方まで、昔に比べて上がってきたりしていることも原因のひとつだと考えられます。

この世代はロストジェネレーションと呼ばれ、いわゆる就職氷河期に社会人となり、キャリアを積もうとして職場を転々とせざるを得なかったことから、どうしても親御さんに頼りにくくなってしまうこともその要因のひとつとしてあげられると思います。

そして男性の育児参加は必須。男性の産休・育休を作れる社会を目指していかないといけないと感じます」

文=石嶋瑞穂

この著者の記事一覧へ

PICK UP

あなたにおすすめ