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2019.10.24

東京モーターショー2019 「ハコ型」車に感じた新しい未来

東京モーターショー2019で発表されたトヨタ「e-RACER」


ホンダは、フランクフルトで発表した小型EV「ホンダe」の市販バージョンを発表したと同時に、世界初公開の新型フィットも展示した。ホンダのF1参戦60周年記念の展示も見応えがあった。

マツダもついに電気自動車に挑戦することを見せた。MX-30という新しいデザインランゲージを取り入れたSUVは近い将来販売するそうだ。



スバルは、よりアグレッシブな外観で登場した新型レヴォーグを発表し、それと同時に、WRXSTIのファイナル・エディションも披露。でも、これはスバルが30年前から同じエンジンを使ってきて、このEJ20型をリタイアさせる意味を持っている車種であり、WRXSTI自体はまだまだ続く。



三菱は、お得意のPHEVの技術を使って、小型ガスタービンのエンジンと組み合わせたMI-TECHのSUVコンセプトを披露した。ガスタービンを使うことによって、車のサイズをかなり軽量化・縮小できるということで、この新しい試みをしたそうだ。



ダイハツは、日本の折り紙とアニメ文化にインスパイアされた3台の小型コンセプトカーを展示。英国人の同僚が「この手の可愛い日本らしいクルマがなければ、東京モーターショーは寂しい」と言うのには全く同感する。



「ダイハツの『IcoIco』(行こう行こう)のパブリック・トランスポーターには「二ポテ」と言う小型ロボットがついており、そのロボットに「買い物に行きたい」とか「駅まで行きたい」とか言えば、同氏は車にその意思を伝えて連れて行ってくれる。孫という意味の二ポテを名付けて、孫の手を借りるという発想か?



僕にとっての今年のハイライトは、パナソニックが2030年を想定し、自動運転時代の車内空間をイメージしたデモカー「スペース・エル」だった。多くのカーメーカーは自動運転・電動化・AIをフィーチャーしたコンセプトを出したけど、そのほとんどが、ただ車輪のついた大きな箱だった。

でも、「スペース・エル」は究極の自動運転車ということで、ハンドルもなければ運転席もない。その代わりに、シックな家具のある茶の間で、座っていながらにして、窓や天井に搭載した巨大なディスプレーに映る音楽のコンサート、水族館、花火大会などを楽しめる。4K画像と22個のスピーカーから流れる極めて本物っぽい音響に驚いた。



ディスプレイの奥に現れたジンベイザメが自分に向かって泳いで来て、そのまま真上を通った時のスリルは忘れらない。その次に映ったベルリン交響楽団のコンサートはまるで会場にいるような感覚で、不思議なほどリラックスできた。冷房・暖房、またアロマセラピーのような香りも席から直接出るという快適さだ。これが近未来の自動運転車だとしたら、納得できる。

僕は正直に言って、自動運転にはそれほど関心がないけど、近未来にスペース・エルのような究極の移動手段があると、自分が運転するのとはまた違う行為として、かなり期待できると感じた。

今回の東京モーターショーをどう思うかとイタリア人の同僚に聞いてみたところ、「そうね、セクシーさをどこにも感じないね」と答えた。それは僕も否定できない。

でも、確かにセクシーさはないかもしれないけど、業界が急ピッチで開発を進めるEVや自動運転のクルマが支流になっているような気がする。今の東京モーターショーがiPhone 11だとしたら、次回はiPhone 13に進化していると思うと、どの程度の技術の進歩かを想像するだけで気絶しそうだ。

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
「ライオンのひと吠え」 過去記事はこちら>>

文=ピーター・ライオン

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