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現場からの医療改革


米国では「バカ売れ」なのに、日本では知名度が低い

我が国では、ゾスタバックスは未承認だが、シングリックスは2018年3月に承認されている。ところが、GSKの生産が追いつかず、国内では未発売だ。せっかくの医学の研究成果を国民が享受できていない。

ではどうすればいいのか。ひとつはシングリックスを海外から輸入することだ。1本1万5600円だ。病院で接種する場合、2万5000円くらいになるだろう。推奨されている2回接種を行えば、費用は約5万円になる。高額だが、帯状疱疹は予防できる(効果の持続については今後の臨床研究を待たねばならない)。

ただ、米国での品薄を受け、日本にまで提供する余裕はないらしい。ナビタスクリニックの久住英二理事長が、医薬品の個人輸入仲介業者に問い合わせたが、「当面、解決の目途は立っていない」という主旨の回答を得たという。

いまできることは、とりあえず帯状疱疹ワクチンにこだわらず、乳幼児を対象とした水痘ワクチンを接種することだ。幸いなことにわが国の小児用の水痘ワクチンは力価(ワクチンの効果)が高く、米国で承認されたゾスタバックスとほぼ同等だ。ゾスタバックスを60歳以上の人に対してしたところ、帯状疱疹は61%減少したのは前述の通りだ。シングリックスには及ばないが何もしないよりは遙かにいい。水痘ワクチンの接種費用は8000~1万円程度だ。公的な助成はないが、帯状疱疹のリスクを考えれば、自腹を切っても接種しておいた方がいいだろう。

米国では帯状疱疹に対する国民の関心が高い。シングリックスであれ、ゾスタバックスであれ、帯状疱疹ワクチンは「バカ売れ」している。ところが、日本の状況はお寒い限りだ。

外来診療をしていて、患者さんから「帯状疱疹の予防ワクチンを打って下さい」と言われるのは、「身近な人が帯状疱疹で苦しんだので、予防方法があったと知った」という場合だ。そうでなければ、予防接種についてはまだまだ一般には知られていない。そもそも帯状疱疹の皮疹や症状が出ても、帯状疱疹そのものを知らずに受診するのが遅れる例も多い。

このように、帯状疱疹については、認知度が低い。新聞データベース「日経テレコン」を用いて「帯状疱疹」を含む記事を検索したところ、過去1年間に朝日、毎日、読売新聞が報じた記事の合計は25報に過ぎなかった。「麻疹」を含む記事501報の5%だ。これでは多くの国民が帯状疱疹を認識できないのもやむを得ない。

この結果、多くの中高年がワクチンで予防できる帯状疱疹を発症し、後遺症に悩んでいる。水疱瘡ほどではないが、帯状疱疹も周囲に水痘ウイルスを拡散する。帯状疱疹を予防することは、自らを守るだけでなく、抵抗力のない小児や免疫力の落ちた病人を水痘感染から守ることになる。この機会に帯状疱疹の予防法について、ぜひ、勉強していただきたい。そして、近くのクリニックを受診して、水痘ワクチンを接種されることをお勧めしたい。

文=上 昌広

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