登壇したのは、andu amet代表でデザイナーの鮫島弘子、ファーメンステーション代表の酒井里奈、ヘラルボニー代表の松田崇弥。コンシューマープロダクトを作りつつ、大企業との協業を通じて、より大きな事業展開を実現させた3社の事例に着目してみよう。成功の鍵は何だろうか。
「エシカルなラグジュアリーブランド」を確立
「andu amet(アンドゥアメット)」は、アフリカの雄大な自然やカルチャーからインスピレーションを受け、エチオピアの羊革を使った、エシカルなラグジュアリーブランドを展開。エチオピアの直営工房には、15人のスタッフがおり、日本の技術を受け継ぐ職人がハンドメイドで制作している。ユニークなデザインと優しい手触りが特徴的だ。
鮫島はエチオピアの羊革を「世界最高峰のレザー」と表現。A4サイズのファイルが入るバッグは、ふわっとした軽さでありながら耐荷重は約10キロの優れものだという。エチオピアでは原皮の輸出にとどまっていたが、日本の技術を生かしてラグジュアリーな商品に。「ファストファッションのトレンドとは違ったライフサイクルがある」と紹介した。
andu ametが「ほぼ日手帳」とコラボレーションして手がけた手帳カバーなどのエチオピアの羊革商品
2012年にブランドを始めた当初は「ラグジュアリー×エシカル」というジャンルは見向きもされなかったが、次第に百貨店などで取り扱われるようになった。すると、17年にはANAのファーストクラスとビジネスクラスでの販売へと繋がった。今年9月から、糸井重里の「ほぼ日手帳」とのコラボレーションで手帳カバーを発売し、好評だ。
また、大手外資飲食チェーンとコラボ商品を開発した際には、大企業側のブランドに寄せるのではなく、「andu ametらしいデザインの強みを生かしてほしい」との助言があったという。鮫島は「私たちが目指しているビジョンがパートナーの企業とマッチしたのだと思う。大企業とのコラボは、エシカルビジネスの主流になって行くのでは」と提起した。
地域循環社会の実現には「発酵」が鍵
「ファメンステーション」は、「発酵で楽しい社会を!」をミッションに発酵技術を軸に循環型社会の構築を目指す。2009年に創業し、東京本社と岩手県奥州市に「奥州ラボ」がある。米などの未利用資源からつくったエタノールは化粧品やアロマの原材料に、エタノールをつくる行程で発生する蒸留残さ(米の場合は、米もろみ粕)は石鹸の原材料や、家畜の飼料として活用される。高付加価値な製品を生み出すサステナブルな原料として注目されている。
エタノールの原料となる米の生産には、奥州市の休耕田などが活用され、無農薬で育てられ、有機JAS認定を受けている。酒井は「無駄なもののない社会を目指している」と語った。