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「リクナビ」問題に揺れ、採用市場が大きな転換期を迎えるなか、優秀な人材を獲得するにはどのような採用戦略を立てるべきなのか。2020年に向けて、採用の新潮流を概観する。


今夏、「リクナビ」を運営する就職情報会社の最大手であるリクルートキャリアが、内定辞退率の予測データを、登録する学生の同意なしに企業に販売していたとして大きな問題となった。同社は、個人情報を恣意的に扱ったとして世間から指弾され、政府の個人情報保護委員会から是正勧告を受けることになった。

2000年代初頭より、新卒採用に欠かせないツールとして企業と学生に強い影響を与えてきた就職情報サイト。本件を一つのきっかけとして、利活用について再考する企業が増えると考えられる。

崩れ始めた母集団形成主義

しかし、この問題が勃発する以前に、リクナビ型就職情報サイトは採用ツールとして曲がり角を迎えていた。一言で言えば「母集団形成主義」の崩壊である。

企業は優秀な学生を採用するため、入社を希望する学生を採用候補として大量に集めることを不可欠な手段とした。この採用候補群を「母集団」と呼び、リクナビをはじめとする就職情報サイトは、ユーザーである企業に対して「母集団形成こそが優秀な学生を採用するためのカギ」であると企業に訴えかけた。同時に学生に対しては、「多くの企業にエントリー(志願)することが、就職に成功するカギ」だと強調し、登録者を増やした。

採用において母集団形成が重要であることは、一般論として間違ってはいない。しかし、あらゆる企業について等しく重要かというと、決してそうではない。

例えば、新卒学生を10人採用する企業にとって、3000人の母集団形成が必要だろうか? 一方、学生の側から見て、入る企業は1社なのに、50社にエントリーすることに合理性があるだろうか? 就職情報サイトを使えば、3000人はおろか数万人の母集団形成が可能であるし、登録学生は容易に数多くのエントリーができるのである。企業にとっても学生にとっても、極めてロスが大きく、不合理を孕むのが、母集団形成の過度な重視だった。その不合理さに、多くの企業が気づき、またセンスのいい学生も気づき始めている。そこに、リクナビの個人情報保護違反が追い打ちをかけた。今後、この母集団形成主義からは一斉に、大量の離反者が出ることは間違いない。

就職情報サイトとは真逆の手法で

就職に関する学生の志向は多様化し始めている。特に優秀層には、保守的な大企業を避け、すぐに戦力になることが期待されるベンチャーやスタートアップ、あるいはコンサルティングファームを選択する傾向が明らかだ。そのような企業群は概して、投網をかけて母集団形成するような採用手法はとらず、HRテクノロジーの進化による新しい採用手法を使うケースが多い。

例えば、ダイレクトリクルーティング。学生が自らを売り込むPRを登録し、企業の採用担当がそのデータから自社に相応しい人材を見つけ出し、アプローチして採用する。就職情報サイトによる採用とはベクトルが真逆の手法である。

もう一つ、リファラル(紹介)採用も急速に広がってきた。要は、社員が知り合いを紹介する採用手法だ。社員からの紹介であれば、事前に適性やスキルを把握することができ、企業側は社風や働き方についても伝えやすい。

これらの手法は、母集団形成主義による採用に比べ、入社後のミスマッチが少ないことは言うまでもないだろう。

優秀層を獲得するためには、より「個」にフォーカスした採用手法を設計する必要がある。それは、手間とエネルギーを今以上にかけなければならないことを意味する。企業は、その覚悟を問われている。


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文=間杉俊彦

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