ビジネス

2019.10.31

薬機法の改正を追い風に。カケハシが26億円調達で挑む、しなやかな医療体験の創造

カケハシの代表取締役CEOの中尾豊(左)、取締役COOの中川貴史(右)


医療業界はレガシーな業界として知られており、Musubiのような新しいテクノロジーは敵対視されやすい。にもかかわらず、Musubiが多くの薬剤師から支持を集めている理由は何か。中尾は、「業界に対するリスペクトの気持ちがあるから」と説明する。

「自分たちは決して業界をディスラプトしようと思って事業をスタートさせたわけではありません。大事なのは日本の医療体験を良くすること。そのためには医療業界のみなさんの力が欠かせません。患者にメリットがある体験づくりもそうですが、薬剤師にもメリットがある体験づくりを徹底していく。だからこそ、業界内外に敵がいなく、みなさんの力を借りながら事業を成長させていくことができています」

薬剤師が輝ける場所をつくりたい

患者の体験を良くすることはイメージしやすいが、薬剤師の体験を良くするのはどういうことか。取締役COOの中川貴史は、「薬剤師のポテンシャルが最大限発揮できるような環境をつくること」だと説明する。

医療レベルが高い日本において、一部の薬剤は副作用管理が重要かつ大変だが、大半の薬は飲んで何も問題が発生しないケースが多い。そのため、薬を投薬する薬剤師は患者に「ありがとう」と言われることない。一方、医師は患者が抱える病気を治せば「ありがとう」と感謝してもらえる。

「薬剤師は薬を調剤する裏側で、さまざまな薬学的な判断をしているのに、それが患者には見えにくい。なかなか感謝されにくいポジションにあります。例えば、『アンサングシンデレラ』という漫画があるのですが、“アンサング”という言葉の意味は報われない、賞賛されない、というもの。日が当たらない薬剤師の人たちが輝ける場所をつくらないといけません」

今まで見えにくかった薬剤師の価値を見やすくし、患者の安全性を守っていることを分かりやすくする。そんな世界を実現することで、患者の期待値を超えるコミュニケーションが薬局で出来るようになる、という。

「まずは患者の体験を向上させる。若者であれば利便性の向上かもしれないですし、高齢者であれば安心感のある相談場所をつくることかもしれない。それぞれの患者にあった医療体験を実現するとともに、医療従事者もそれに対応できるような業務フローを実現する。今後も地道に、着実に進めていきたいと思っています」(中尾)
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文=新國翔大 写真=小田駿一

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