例えば「好きなこと」を中心に据えたコミュニティづくりは、いつの時代も必要とされてきました。一昔前なら雑誌がこの役割を担っていました。僕みたいに学校に馴染めなかった人間は「ガロ」を読んだり、アンアンを読む女の子グループが苦手な人たちは「オリーブ」を読んだり、読者投稿にハガキを送ってみたりして、自分の好きなものや世界観を表現したり構築したりしていたと思います。
この機能をよりインタラクティブにしたのがインターネットです。
例えばアイドルのファンクラブは昔からありますが、いまはツイッターのハッシュタグごとにファンクラスタとして繋がれるようになりました。匿名アカウントを作れば、学校や職場のリアルな知り合いに気づかれることなく、好きなものを思いっきり表現したり、それを受け取ってくれる相手がいたりして、表現することの成功も失敗も、現実生活にすぐに支障が起きない場で作ることができます。
オンラインサロンという自己表現ジム
この数年で伸びているオンラインサロンは、「別に好きなものも趣味もない。でも遠くの何かと繋がってみたい、生き方を変えたい、表現したい」という人の思いさえも叶える場所になってきていると思います。特に堀江さんや西野さんなどのユーザー参加型のオンラインサロンは、安全に自己表現ができる受け皿としても機能していると言えるのではないでしょうか。
彼らのサロンでは、初めから他者のために行動を起こしたり、意見を言ったり、表現したりすることが求められるので、普段の職場でそれができずに困っている人にとっては、非常にいい訓練の機会になると思います。それに、堀江さんや西野さんが炎上や批判を厭わずに行動していく姿を間近で見ることで、人目を恐れず行動することへの勇気も出てくるでしょう。
僕は、特に参加型のオンラインサロンを、インターネットを通して自己表現の成功を失敗を積んでいく“ジム”のような位置づけとして利用するのもいいのではないかと思っています。
同質性の中で失敗すると、一生揶揄されるかもしれないという恐怖がありますが、オンラインサロンにはそれがありません。失敗の記録が残り続けたりはしないし、むしろ炎上さえ自分の武器にしている懐のある人のもとであれば、チャンスを掴む勇気を培えます。
そして、インターネット空間を通じて勇気を出せる自分になれたら、例えばSNSの匿名アカウントではなく、本名アカウントで好きなものを打ち出してみたり、職場や家庭などで自分を表現したりしてみるステップを踏んでいきましょう。
「得体の知れない恐怖」を前に、焦ることも、勇気がでない自分を嫌悪する必要もありません。少しずつ少しずつ経験を重ね、確固たるものにしていけばいいのだと思います。
連載:ポストAI時代のワークスタイル
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