ビジネス

2019.10.24

公共テレビが理想的なSNSのモデルとならない理由

Gettyimages

Tumblr(タンブラー)の元幹部マーク・コートニーは先日、米紙ニューヨーク・タイムズに寄稿した記事で、非営利の公共交流サイト(SNS)立ち上げを提唱した。フェイクニュースや、過剰にセグメント化された広告、有害コンテンツがまん延する現状のSNSを規制あるいは分割するのではなく、米公共放送(PBS)に似たSNSを作るべきだという主張だ。

こうした公共SNSでは、図書館カードや運転免許証などの実際の身分証明書を使って入会する必要があるものの、匿名やペンネームで投稿でき、問題行為を防ぎつつ表現の自由を確保できるとコートニーは説明している。

この主張は基本的には理にかなっている。多くの国家では、(実現度合は国によってまちまちだが)公平な情報を提供するために公共テレビ放送を運営している。その延長線上で考えると、公共のSNSは、宣伝機会を求める企業に邪魔されることなく情報交換を行えるプラットフォームとなるだろう。

ただ、公共テレビと公共SNSを単純に比較することには問題がある。公共テレビは単方向メディアであり、提供するコンテンツは管理が可能で、全国民が利用できるわけではなく、公には商用目的で利用できない。米国のPBSは、純粋な情報番組のほか、ドキュメンタリー、さまざまな話題についての集会や討論会、はたまたトレーニング番組まで、多岐にわたるコンテンツを提供しているが、視聴者は単にチャンネルを合わせて見るだけで、参加する余地はない。設備費や制作費は国や州の予算、各種財団からの支援、さらには視聴者からの寄付で賄われる。

一方でSNSは、ユーザーが提供するコンテンツによって成り立つ。双方向性があり、視聴者が制作者となるため、利益相反の管理が難しくなる。企業の関与はどうやって排除すればいいのか? それには、企業がユーザーを通じてコンテンツを作成することを阻止する必要がある。そうしたユーザーは金銭的な利益のため、あるいはそうしたコンテンツが公共の利益になるとの思いから企業に協力する。

ユーザーによる広告コンテンツの投稿を防ぐにはどうすればいいのか? これは複雑な問題であり、管理や監視が難しい。違反者を排除する方法は? ドナルド・トランプ大統領ですら自分に批判的な人々を自らのツイッターアカウントからブロックできないのに、公共SNSを悪用したユーザーをどうやって追放できるというのか?
次ページ > 問題は広告ではない

編集=遠藤宗生

ForbesBrandVoice

人気記事