暫定合意に達したGMストライキ 背景にはEV台頭などの動機も

ストライキの様子 by Gettyimages

全米自動車労働組合(UAW)の4万9000人を超える組合員らはここ1カ月ほど、ゼネラルモーターズ(GM)に対しストライキを行っていた。両者は、近いうちに正式に合意に至る可能性がある。

今回のストライキでは、全ての関係者に大きな代償があった。米公共政策調査グループのアンダーソン・エコノミック・グループ(Anderson Economic Group)によると、ゼネラルモーターズ(GM)は最大15億ドル(約1600億円)の利益を失っている。一方でUAWの組合員は8億3500万ドル(約910億円)以上の賃金を失い、ミシガン州は1850万ドル(約20億円)の税金を失った。

UAWは、GMの要求に応じる方がストライキに入るよりも高い代償を生むと感じていた。一方のGMも、ストライキの危険性を受け入れる意思があった。おそらく、労組の要求に応じることがGMにとっても高くついたのだろう。

UAWが重視する要求は、若くて地位が低い組合員に対する粗悪な報酬レベルの改善と、臨時従業員にフルタイムの従業員になる選択肢を設けることだった。こうした要求や賃上げを勝ち得るには、利益が高い2019年がチャンスだった。GMも同様に、労働組合が不活性化し、その上で利益性の高い未来を目指せるのであれば、売り上げと生産で数十億ドル失うだけの価値はあったようだ。

このように、両者にはそれぞれ明らかに決定的な懸念があったものの、その背後にはアナリストや業界の観測筋がストライキにつながったと考えるより大きな問題が存在する。それは、電気自動車(EV)への世界的な転換と、その中での組合労働者の役割だ。

鍵を握るEVの台頭

UAWとGMの間の暫定合意で大きく注目を集めたのは、EVへの投資だ。GMは合意の一環として、デトロイトのハムトラック工場の閉鎖を止めるため、同工場での電気トラック生産に30億ドル(約3300億円)を投資するとした。またGMは別の発表で、同社が近頃工場を閉鎖したオハイオ州ローズタウン地域に電池の生産施設を設立するとも発表した。

米自動車企業トレンドの権威と目されているマネジメントコンサルタント、ダロン・ギフォードは、今回のストライキがEVへの移行に対する不安によって引き起こされたと考える人の一人だ。ギフォードは、EVでは特にエンジンと動力伝達装置において必要な部品が従来型自動車に比べて少ないため、結果的に生産労働者が少なくて済むと指摘している。UAWの概算によると、EVへの転換により3万5000もの仕事が危機にさらされる。

EVへの移行は、多くのUAW組合員と将来の自動車生産労働者に深刻な脅威を投げかけている。オハイオのフィアット施設(GMの施設ではない)のあるUAW役員は「私たちの仕事が失われる可能性がある。私たちはもはや必要とされていない」と述べている。
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翻訳・編集=出田静

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