銀行口座を持たない20億人を幸福にするテクノロジーとは──藤原洋氏に聞く

一般財団法人インターネット協会理事長 藤原洋氏


金野:そうした革命のなかで、フィンテックの果たすべき役割は何でしょうか。

藤原:インターネットには自律・分散・協調という設計思想があります。集中させるものではありません。ところが、今の世界の金融システムは中央集権型の仕組みになっている。

従来は貸せないと思われていた人を経済活動に参加させる。それがフィンテックであり、今後の発展需要なのです。フィンテックは未来への信用を金融の仕組みとして提供できます。



金野:個人の信用を見える化させ、データのプライバシーを重視しながら途上国の社会課題の解決にテクノロジーを活用する。そこでプライバシー保護は重要だと思いますが、個人情報とアンバンクドの関係についてどうお考えでしょうか。

藤原:まず、個人情報は誰のものかという考えに立つと、大きく3つあると思います。

1つ目は、どんな方法でもいいから集めた企業のもの。2つ目は、国家のもの。国家が個人情報を使うという考え方ですね。そして3つ目は、個人のものであるということです。

1つ目の考え方で進んできたのがアメリカです。2つ目の考え方は中国。3つ目はヨーロッパで、GDPRなどはデータは個人のものであるという考え方に基づいている。GDPRは、ヨーロッパが考え出した対米中の戦略なんですね。

日本はどうするか。やはりヨーロッパ式の「データは個人のもの」という考え方が一番合うのではないかと思います。では、個人のものであるデータをどう活用するのか。購買履歴からお金を貸したり、投資するのにふさわしい人間と判断できるようにする。つまり、資金調達のために個人データを活用するのが一番健全だと思います。

セキュリティやトレーディング方法などを考える必要がありますが、個人情報は、その人の資金調達を支援するためのものなのです。

金野:個人のデータそのものが融資や寄付といったマネタイズにつながり、貧困のない社会につながる。そこから、テクノロジーで資本主義がアップデートされた、新しい世界が作られていくのだと思います。

藤原:先進国の人たちは過去の蓄積があるから、ある程度の資産を持っています。その資産をブルーオーシャンである途上国に投資する義務があります。寄付という手段もありますが、それよりも、投資でしょう。途上国に投資してリターンを得る仕組みを作りましょうと。寄付を否定はしませんが、限界がありますから。

日本はアメリカや中国、ヨーロッパというような10%の富裕層だけを相手にするのではなく、世界全体が豊かになるためにブルーオーシャンへの投資をすべき。クラウドファンディングもありますし、まとまった大規模な投資よりも、小さな資本をたくさん集めてくる仕組み作りに注力すべきだと思います。

金野:日本が世界中に恩恵が行き渡るようテクノロジーを生かしていく、ということですね。今日はありがとうございました。


筆者(右)と藤原洋氏(左)◎一般財団法人インターネット協会理事長、ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長CEO、インターネット総合研究所代表取締役所長

文=金野索一

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