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2019.10.22

「USAトゥデイ」が紙の新聞を廃止、デジタル移行の見通し

Sergio Delle Vedove / Shutterstock.com

米国を代表する一般大衆紙の「USAトゥデイ」が、プリント(紙)版を廃止しデジタルのみに移行するとの見方が浮上した。

Poynter Instituteのアナリスト、リック・エドモンズは10月16日のレポートで、USAトゥデイの発行元のガネット・カンパニーが、米国の地方紙を束ねるGateHouse Mediaの親会社のニューメディア・インベストメンツの提案を受け入れ、今後の数年でプリント版の廃止を検討中であると述べた。

ガネット・カンパニーは、エドモンズの見方を否定した。ニューメディア・インベストメンツは総額14億ドルを投じ、ガネット・カンパニーの買収を進めているが、USAトゥデイ発行人のマリベル・ペリッツ・ワズワースは声明で「プリント版は今後もUSAトゥデイの重要なポジションを占めていく」と述べた。

両社の買収交渉は来月にも成立する見通しとされている。

しかし、エドモンズはこの見方に自信を持っている。エドモンズは2人の匿名の関係者の証言を引用しつつ、「プリント版の廃止により、USAトゥデイは事業再編を進めていく」と述べた。

エドモンズによると、プリント版のUSAトゥデイには、ほとんど有料広告が掲載されていないという。同紙の発行部数は2007年に約230万部だったが、現在は52万部程度まで落ち込んだ。

出版業界に詳しい調査会社Huber Researchのアナリスト、Doug Arthurも「USAトゥデイのプリント版は、ここ数年、事業の主力ではなくなっている。現在も果たして、米国全土でこの新聞が入手可能なのかどうかは不明だ。主な収益源はデジタル版に移行しており、ホテルや航空会社も、無料の新聞の配布を取りやめている」と述べた。

エドモンズによると、ガネットとニューメディア・インベストメンツらは、プリント版の廃止により、3億ドルのコスト削減を行う計画だという。「USAトゥデイはバージニア州マクリーンの本社で289人を雇用しているが、紙版の廃止により大幅な人員削減が可能になる」と彼は指摘した。

米国の新聞業界では、プリント版の廃止やダウンサイジングが進んでいる。ペンシルベニア州の「ピッツバーグ・ポスト・ガゼット」は今年に入り、プリント版の発行日を週に3日に縮小した。多数の日刊紙を傘下に持つマクラッチーも、一部の新聞の土曜版の発行停止を進めている。

ガネット・カンパニーとニューメディア・インベストメンツ傘下のGateHouse Mediaは、米国の新聞業界の2大勢力であり、両社は全米47州で250の新聞メディアを傘下に置いている。2社の統合が成立した場合、新会社はガネットの名前を受け継ぎ、新CEOにはMichael Reedが就任する。

編集=上田裕資

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