オーストラリアでの初プロモーション、やはり成功の鍵は「人」だった

オーストラリアで行った岐阜県プロモーションの様子


そして2時間後。ほとんどのパネルが高く持ち上げられていた。よくよく足元を見ると、日本では見たことのない小型タイヤみたいに強靭そうな真っ黒の新品のガムテープを横にして3段重ねて、すべてのパネルの足元に設置し、黒い布で覆ってあった。

あとで聞いたのだが、ホテル側が何のアクションもしないので、日本人事業者側で1つのパネルにつき底の部分に両側3個、計6個のガムテープを置き、嵩上げを図ったというのだ。パネルは27枚あったので、全部で162個の巨大ガムテープを購入したという。



この件は、シドニーで会場とした4つ星ホテルでの出来事だったが、ホテルの担当者のスキルがその格付けに該当しないことは早々に判断できた。対して、日本人事業者の女性の対応は、まさにこれまでさまざまな現場に対応してきたであろうことがわかる百戦錬磨のものだった。

私も現場の人間なので、こういうところでの対応の仕方についての勘どころは心得ているつもりだ。今回も私のなかでは、いつ、どの段階で妥協するかを内心ではいろいろと想定していた。最悪、27枚のうち何枚までは絶対妥協できないかといった計算も自分なりに考え始めていた。

でも、簡単に妥協もできない。何しろ、初めてオーストラリアで岐阜県をプレゼンするのだから、絶対に失敗できないのだ。私のなかでは、ホテル担当者への信頼はほとんど失墜していたので、あとは日本人事業者の能力をどう見極めて、どのように判断するかが私自身に試されていた。

私は彼女に、妥協しない「岐阜県スタイル」を見せたかった。そして、彼女は私に、「162個のガムテープ」でしっかりと応えてくれたのだ。それはきっと、彼女が異国の地で長年プロフェッショナルとして仕事をする中で、さまざまなマインドギャップを乗り越えて来た結果だろう。

私は、世界各国、いろいろな場所で日本を伝える仕事を続けているが、そのためには現地の人の協力なくしては、良い結果を産むことはできない。そして、その現地の協力者の人格や能力を見極め、こちら側も相手側も、最終的には「人」と「人」とでどれだけ信頼しあえ、真剣に向き合える関係となれるかが重要だ。そうでなければ本物の仕事はできないと思う。


レセプションのオープニング、ウェルカム・スピーチを行う岐阜県の古田肇知事

結局、最後までホテルの担当者からは、お詫びの言葉はひと言もなかったけれども(海外ではよくあることだ)、イベントの終わりにホテル担当者の上司の女性(最後まで担当者は女性ばかりだった)から、「気の利かない部下で申し訳なかった」的なエクスキューズもあり、私の心が少しだけスカッとしたのは言うまでもない。

現地の日本人事業者の女性といい、やはり、なんでも最後は「人」なのだ。こうして、海外で日本を伝える私の旅は、まだまだ続く。

連載 : Enjoy the GAP! -日本を世界に伝える旅
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文=古田菜穂子

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