ビジネス

2019.10.22

「エシカル」を発信し続け、10年。いま、白木夏子が考える「誰もが幸せを追求できる」世の中とは?

HASUNA代表取締役の白木夏子


ユダヤの人々は、アイデンティティが世界中に散らばっている。イスラエルに住んでいる人もいれば、戻れない人もいて、生まれはアメリカでも、自分の祖父母はアメリカ系、イタリア系、ロシア系、トルコ系それぞれ背景の異なるユダヤ人だったりする。

根なし草だからこそ、自分のアイデンティティは何なのか、自分にとっての幸せとは、と、小さなころから家庭でも学校でも、とにかくディスカッションしつづけるのだそうです。別にそれで、答えが出るとは限らない。けれど、議論して議論して、その時々で自分の納得できるポイントを見つけられることが重要なんです。

日本で暮らす私たちは、自分が何をしたいのか、何が好きなのか……自分が何者なのか、さまようばかり。小さなころからそれを考える機会も語る機会もほとんどないし、習い事や勉強ばかりで忙しく、やるべきことが自動的に降ってくる。だから、自分で考える力が弱いし、確固たるものがないから、迷うんですよね。若い子を見ていても、そう感じます。



私が2018年から、「REING(リング)」や「PIMLICO No.72(ピムリコ)」といった新たなプロジェクトをはじめたのは、これからはより「個」の時代になって、自分がどんなときに幸せでいられるかを深く突き詰めて考えて、感じて、それを行動として表す時代になっていくと考えているからです。

「REING」は、様々なパートナーシップのあり方を追求するブランドとして、多様性を象徴するレインボーカラーのリングやペットと着けられるリングなど、さまざまな関係性を結ぶ指輪を開発したのですが、この8月には新たに、男女問わず身につけられるアンダーウェアを開発しました。

「ジェンダーニュートラル」という言葉を使用しているのですが、LGBTってL、G、B、Tと明確に区切れるものではなく、レインボーのようにグラデーションで曖昧なもの。もっと、自分がどう過ごすのが心地よいか、どうしたら幸せでいられるかを自分に問いかけて、自分で選びとっていくのが、令和の時代らしいあり方なのではないかと思うのです。

思えば私自身、保守的な家庭に育って「早く結婚しなさい」と言われてきましたが、誰かに言われた通りに生きているだけでは、人生つまらない。そう考えて飛び出し、学生時代に留学したロンドン……黙っているだけでは空気のように扱われてしまう環境で、否が応でも自分とは何者なのか、何が自分の考えなのか、常に問われつづけました。

だからこそ、さまざまな人と出会い、「エシカル」という軸を見つけ、新たな世界が広がった。もっと自由でいいんだ、と思えたんです。だからこそ、自分はどうしたいのか。何が幸せか。そんな内的追求は、これからも続いていくのだと思います。


白木夏子◎英ロンドン大学卒業後、国際機関、投資ファンドを経て2009年に株式会社HASUNAを設立。ジュエリーブランドHASUNAでは、ペルー、パキスタン、ルワンダほか世界約10カ国の宝石鉱山労働者や職人とともにジュエリーを制作し、エシカル(=道徳的、倫理的)なものづくりを実践。”未来へと受け継がれるジュエリーブランド”として、日本におけるエシカル消費文化の普及につとめる。

文=大矢幸世 写真=小田駿一

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