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2019.10.22 18:00

起業家には「原体験重視」と「着眼点重視」の2つのタイプが存在する|面白法人カヤック 柳澤大輔


起業家は「原体験重視型」と「着眼点重視型」の2タイプ

──柳澤さんの社長日記にも書かれていましたが、起業家には「原体験重視型」と「着眼点重視型」の2つのタイプが存在すると考えておられますね。

そうですね。「原体験重視型」は非常に意志が強いのが強みで、しつこくやり続けることができます。何かを変革するには様々な困難が伴うので、最終的には意志の勝負になります。投資家が起業家の原体験を投資の判断材料にすると言われますが、それはこういった理由からです。ただ、その分しなやかさに欠けやすいとも考えられます。

一方、「着眼点重視型」は発想が自由で、新しいマーケットが立ち上がるといち早く参入したり、そもそも市場がないところに市場をつくったり、思いついたりすることが得意です。反面、原体験重視型のような強い意志がないこともあり、忍耐強さが欠けやすい場合もあります。私自身はどちらかというと後者の「着眼点重視型」だと思っています。

濃い原体験があるから事業のアイディアがあろうとなかろうとやり抜ける、もしくはアイディアや着眼点が次々と湧いてくる。このどちらかの素養が無いと、あまり起業には向いていないとも言えるかもしれせん。



──つまり「忘れっぽい」に加えて「原体験があるor着眼点が湧いてくる」というのが起業家の素養と言えるかもしれませんね。「着眼点重視型」の起業家が成功するための秘訣はなんでしょうか?

冒頭にもお話しした通り、起業家はゼロイチを生み出さなければいけないので、とにかく失敗を恐れずに当たるまで数を撃たないといけません。

「原体験重視型」は自分の中の原体験に対する想いが消えないので、手を打つにも原体験に沿った方法でやり続けられるしつこさがあります。一方で、「着眼点重視型」はゼロイチを生み出すまでに次々にアイディアが出せるようでないと上手くいきません。「アイディアを温めて温めて、ようやく出したら失敗した」という起業家に次のチャンスはありませんから。

「着眼点重視型」の起業家が成功するかどうかは、思いつきの多さがものをいいます。では思いつきの少ない人が起業して成功するにはどうすれば良いかということに関しては、アイディアを出すのが得意な人から着眼点を得て乗っかるという以外にない気がしますね。

「起業したいけど事業のアイディアが無い」という人を結構見聞きするのですが、「着眼点重視型」の起業家にそういった感覚はあまり見られません。事業の市場規模に大きい小さいの差はあれど、やろうと思ったら何人かが食っていける程度の事業アイディアはごまんとあるんです。そんな状態になって初めて「着眼点重視型」の起業家と言えるのではないでしょうか。

──「こういうのがあったらいいな」という程度であれば、アイディアを出そうと思えば出せると思うんですが、どのレベル感のアイディアを思いつければよいでしょうか?

これはシンプルな話で、投資に対してリタ―ンが見合う事業アイディアです。そのレベルで大量にアイディアを思いつける人はそうそういません。

困難な状況でもブレない強烈な原体験があるか、それとも大量のアイディアを事業化可能レベルで次々と思いつくことができるか。こういった素養が必要だからこそ起業家は稀少なんだと思います。

連載:起業家たちの「頭の中」
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文=小縣拓馬 提供元=Venture Navi powered by ドリームインキュベータ

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