尿の解析からスーパーレゾリューションまで ネイバーのAI投資の今

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LINEの親会社ネイバーは、他のグローバルIT企業同様にスタートアップへの投資に余念がない。10月18日に行われたアクセラレータプログラム「D2スタートアップファクトリー」(通称D2SF)の記者会見では、かねてから注力してきた人工知能(AI)、デジタルヘルスケア、モビリティー分野へのコミットを改めて強調。新たに資本を投下したスタートアップ3社を発表した。

まず投資先として紹介されたのは、デジタルヘルスケア企業・サウンダブルヘルス(Soundable Health)だ。同社のサービス「PRIVY」は、AI技術をベースにスマートフォンで尿の音を収集・分析。そのデータから、健康を管理する上で必要なさまざまな情報を可視化し、ユーザーに明示するというコンセプトになっている。

より具体的には、尿が水面に排出される際の音からスピードや量を推定。排尿に障害がないかをAIが診断する。

多くの人が患っているとされる排尿障害は、症状を客観的に判断することが難しく、病気か否かを見極めるのも困難だ。サウンダブルヘルスは、そのニッチだがとても解決が難しい課題に目を向け、サービスを開発した。PRIVYは、韓国の政府省庁である食品医薬品安全処に個人用のウェルネス機器としても認証されており、韓国および米国市場を狙いに定めていくとしている。

次に紹介されたのは、エスプレッソ・メディア(Espreso media)だ。

同社はディープラーニングで低解像度の動画を高解像度に変換する「スーパーレゾリューション技術」を保有している。いわゆる映像復元技術のひとつとなるが、エスプレッソ・メディアは主に放送事業に注力している点が特徴だ。

UHDに対応したテレビが普及するなか、まだまだコンテンツの量は多くない。そこで、同社は既存のHDコンテンツをUHDに変換する事業を主なビジネスの柱に据えている。その他にも、監視カメラや医療用映像、航空・衛星映像の高解像度化などにも応用が期待されている。

イベントでは、電気自動車に充電を行う移動型ロボットの開発企業EVAR(ロボットも同名)も投資対象として紹介された。EVARには、自律走行型とカート型があり、前者は予約を行った電気自動車がある場所まで自動で移動し、充電を行う仕様になっている。後者は、搭乗者が自分で運び充電するタイプだ。



企業側は、充電インフラおよびサービスとしてまず事業を育て、電気自動車が増えた際にはユーザーデータとマップデータを組み合わせた新しい事業を展開したいとの意向を示している。

ネイバーの歴史を辿ると、1990年代後半のIT黎明期に成功を遂げた新興企業で、他の韓国の財閥系企業とは成長の文脈が異なる。そのサクセスストーリーもとてもユニークだ。ここ数年では、テクノロジースタートアップへの大規模投資を行っており、投資家として存在感も増してきた。アジアにおけるプレイヤーの一角として、今後の動向に注目したい。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河 鐘基

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