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2019.10.21

教育現場へのICT機器導入は、本当に授業の質を上げるのか?

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「地域差」についてきちんと考える

例えば、整備方針にもあった「実物提示装置」だが、これを使うと、教科書やワークシートや子供たちのノートなどを、大型提示装置(大型テレビやプロジェクター)に簡単に映すことができる。

これにより、子供たちの手元にある教科書でそのまま説明できるし、わざわざ黒板に書く→子供たちがノートに写すという時間を大幅に短縮できる。先生の身体で黒板が見えないというようなちょっとした時間ロスもなくなる。そして、それらの時間を子供たちが演習したり話し合ったりする時間に回すことができるのである。これは「授業づくり」の工夫なのだ。

ICT機器をツールとして使うことで、授業を効率よく「構成」し、子供たちの学習効果につながる可能性が増えることにつながる。このように、先生が「授業づくり」をうまくできるかどうかということが大切なのであり、ICT機器の活用がうまい先生は、「授業づくりがうまい」ことが多い。

ICT機器の活用と授業づくりを分けて考えてしまうと、「他に先にすることがある」「ICT活用をするような時間はない」という言葉につながってしまうに違いない。

また、「都会の学校や私学ではずっと以前からICT機器を使った授業を受けている」という声も聞く。それだけ地方や公立の学校の多くは取り残されているのだ。

すでにICT機器の整備が進んで1人1台のタブレットを活用した授業を受けている子供たちと、コンピュータ室のパソコンさえ満足に動かない環境で授業を受けている子供たちが、数年~10数年後には同じ社会で生きていくということを考えれば、現状の「地域差」についてはきちんと考え、肯定的に整備していくことは、きわめて大切なことだと思う。

連載:地方の現場から見た教育の今
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文=望月陽一郎

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