最高レベルの子育て政策も無駄? 急減するフィンランドの出生率

出生率の低下について話す、ヘルシンキ大学の教授たち


見えない将来への不安


ヨハンネス・カナネン准教授

少子化の最後の理由として指摘されたのは、「見えない将来への不安」だ。比較社会政策を専門とするヘルシンキ大学のヨハンネス・カナネン准教授は、「短期的な雇用形態が将来の計画を立てにくくしている」と警告する。

フィンランドでは、日本よりも雇用の流動化が進んでおり、契約形態も多様だ。契約社員の数も多く、1年未満の契約もある。その場合、自分が1年後にどのような仕事についているのか、そもそも就労しているのか、予想することが難しい。

子供を産むことの経済的、時間的負担を考えると、ある程度安定した仕事についているほうが産みやすいのだろう。


専門家の見解を3つ並べたが、実ははっきりとした理由はいまだに解明されていない。とはいえ、フィンランド政府を悩ませている「少子化」は、この間もとどまることを知らない。子どもを産みたいと考える人に対してのアプローチ(子育て政策)が充実していても、そもそも国民が「子どもを欲しい」と考えなければ、その政策も意味がない。

筆者は30歳目前だが、子どもが欲しいという感情はそれほど強くない。このような人間がもし増えているならば、まずはその声をじっくり聞いてみるのもいいかもしれない。「少子化」という現象の裏に隠された男女格差、将来への雇用不安など、別の社会課題がよりクリアに見えてくる手がかりがそこにはあるかもしれない。

文・写真=井土亜梨沙

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