しかし現在、この需要源さえ脅威にさらされているかもしれない。消費者と規制機関の両方から、世界中でプラスチックに対する反発が起きているからだ。
米株価指数・投資分析企業のMSCIは、「電気自動車へと移行を遂げ、化石燃料の使用による温室効果ガス排出を抑制しようとする世界規模の取り組みの中で、道路輸送の石油需要は2025年にピークを迎える」と述べている。
石油・ガス企業はそれに応じて、主にプラスチックなどの石油化学製品に重点を移すことが予想されている。2050年までには、エネルギーではなく材料が石油需要の成長の半分以上を占める可能性があるとMSCIは述べている。
しかし同社によると、世界中でプラスチック規制が厳格化し、消費者の優先事項が変化することで、こうした投資の成長が抑制されるかもしれない。MSCIは「リサイクル技術や石油を基盤としない代替策の台頭により、従来型の新品プラスチックは次の『座礁資産』となるだろうか?」と問い掛けている。
反発は石油化学製品にも
PTT、トタル、フォルモサ(Formosa)、IRPCのような企業は、4分の1以上の売り上げを石油化学製品から得ている。そのうち80%は、プラスチック資材や製品を作るため使用されているものだ。しかしMSCIは「プラスチック汚染に対する消費者からの反発や法的な巻き返しが増えており、石油化学製品や石油・ガス開発を進める経済活動が脅かされるかもしれない」と述べている。
プラスチック汚染を防止する規制の数は、過去数年間で急増し、そのほとんどは全プラスチック使用量の40%ほどを占める使い捨て包装材を対象としたものだ。約60カ国に加え、米国の約350の地方自治体では、昨年末までに使い捨てプラスチック規制が導入されているし、欧州議会では2029年までに飲料ボトルの90%をリサイクルするとする法案を通過させた。MSCIの報告書は「この動きが続けば、プラスチックのための石油は燃焼のための石油と同様、『座礁』してしまうかもしれない」と述べている。
売り上げが減少する恐れがあるのは石油・ガスグループだけではない。ダウやメキシケム(Mexichem)、ウエストレイク・ケミカル(Westlake Chemical)、ブラスケム(Braskem)、ロッテケミカル(Lotte Chemical)、三井化学などの企業は現在、売り上げの80%以上をプラスチック関連製品から得ている。
多くの化学企業は、使用する石油やガスの量を減らす方向に転換し、規制の増加や変化する消費者感情への対応を試みてきた。