今回は、ここ2~3年で世界に最も衝撃を与えた話題作をピックアップ。自分たちのメッセージを直接消費者に送り届けるのではなく、消費者自らが“メディア化”して自発的に送り届けてくれるような「起点」を作り出すことで大成功した事例を紹介しよう。
取り上げるのは、2017年のカンヌライオンズにおいて4つの部門でグランプリを獲得した「フィアレス・ガール Fearless Girl (恐れを知らぬ少女)」。
世界3位の運用規模を誇るアメリカの投資ファンド会社「State Street Global Advisors」(以下SSGA)が発売した“SHE”という新しい株式ファンドの広告コミュニケーションだ。
SHEは、女性役員が多いなど、女性が活躍する企業の株式ばかりを集めたファンド。その商品特性を考えると、広告コミュニケーションのメッセージは、もっと“女性のパワーを知ろう”といったものになる。
このSHEが実施した広告コミュニケーションは、金融街ウォール・ストリートのそばにあるニューヨーク市が管理する小さな公園に、少女のブロンズ像「Fearless Girl(恐れを知らない少女)」を設営したこと。基本的には、ただ、それだけだ。
足元には、「KNOW THE POWER OF WOMEN IN LEADERSHIP(リーダーシップにおける女性のパワーを知ろう)」と書かれたプレートが置かれ、「‘SHE’ MAKES A DIFFERENCE(“SHE”は違いを作り出す。SSGA)」と続く。
実はこの小さな公園には、すでに有名な別の像が存在している。それは、荒々しい牡牛をモチーフにしたチャージング・ブルだ。アメリカ株式市場のパワーの象徴として製作・設置されたもので、牡牛であることから、男性のパワーの象徴とも見受けられる。