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先日終了した米中貿易協議の第1弾で、トランプ米大統領はファーウェイの制裁解除を議題に含めなかった。同社に対する米製品の輸出禁止は猶予措置が適用されているが、11月中旬を過ぎると制裁がフルに発動される。

EUは10月9日に公表した報告書で、ファーウェイと中国を名指ししなかったものの、両者から機器を購入するリスクについて警告した。この報告書を受け、トランプ大統領の強硬姿勢がさらに勢いづいたのは想像に難くない。それだけに、このほどドイツ政府が発表した5G通信網の構築に関するルールは米政府を失望させる内容だった。

ドイツ政府は、5G通信網を構築するためのルールをまとめたが、その内容はEUの報告書や米政府が期待するファーウェイ製品の全面排除とは全く異なるものだった。ドイツの経済誌「ハンデルスブラット」は、10月14日に「ドイツ政府は米政府が懸念するファーウェイ製品のセキュリティリスクを無視するだろう。米国はファーウェイによるスパイ行為を恐れ、同社を中国政府の支配下にあると見ているが、バックドアの証拠は何も見つかっていない」と報じている。

ドイツ政府がまとめたルールによると、5G機器の評価に当たっては厳格なセキュリティ管理を実施するという。この取り組みは、EUの報告書が発表されるまでは欧州各国が採用すると見られていたものだ。「我々は、厳重なセキュリティ要件をまとめており、関係者はこれを遵守しなければならない」とドイツ政府のSteffen Seibert報道官は述べている。

ハンデルスブラットによると、ドイツ政府が当初検討していたルール案では、「サプライヤーは信頼できる企業でなければならない」とされていたが、最終的には「企業自身が信頼性を自己申告すればよい」と大幅に軟化されたという。

米政府はこれを快く思わないだろう。ファーウェイは、これまで各国政府にスパイ防止協定に署名することを提案していたが、ドイツ政府の措置はそれに呼応する内容だ。

ドイツ国内でも、一部の政治家は今回発表されたルールに異を唱えている。その1人であるドイツ社会民主党のNils Schmidは、「5Gネットワークにファーウェイを含めるのは大きな過ちだ」と述べている。また、ドイツキリスト教民主同盟に所属し、外務委員会の委員長を務めるNorbert Röttgenは、「これほど戦略的に重要なことを政府レベルで決めるべきではない」と指摘している。

トランプは「弱腰になるな」と政府内から圧力

メルケル独首相は今年3月、メディアに対して「特定の国の企業というだけで排除するべきではない」と述べており、ドイツがファーウェイ製品を全面禁止するのではなく、厳密な精査を経て同社を含めることが予想されていた。

一方で、メルケル首相はEUが共同歩調を取るべきだとも主張していたため、EUが報告書を出した直後にその内容とは大きく異なるルールを発表したことは驚きをもって受け止められた。EUの報告書は厳格なセキュリティテストの必要性を訴えており、その点についてはドイツ政府のルールと一致する。

ファーウェイ自身は、EUの報告書はリスク管理の観点からサプライヤーの多様化を進めるべきと指摘しているだけで、同社に対する警告ではないと受け取っているようだ。同社はまた、EUが特定の国や企業を標的にするのではなく、証拠に基づいた意思決定を行う姿勢を示したことを歓迎している。

米政府は、他のEU諸国がドイツの方針に従うことを懸念している。11月中旬が迫る中、トランプ大統領は中国政府からファーウェイに対する制裁解除を強く要求されていると同時に、米国のタカ派議員からは譲歩するべきでないと圧力を掛けられている。

第1弾の米中貿易協議が終了した直後、チャック・シューマー上院議員はトランプ大統領に対し、「ファーウェイの制裁解除を議題に含めるべきではない。これは中国政府が最も求めていることであり、米政府の弱さを示す結果になりかねない」と警告している。

ファーウェイは、過去10年に渡って欧州市場を開拓し、5G機器とコンシューマデバイスのシェアを拡大することに成功した。同社にとって、欧州は米政府と対峙する上で鍵となる市場であると同時に、5G機器や「Mate 30」など米企業のテクノロジーを使用していないスマートフォンが排除されると最もダメージが大きい市場だ。ファーウェイは、EU諸国がドイツルールを採用することを祈っているに違いない。

編集=上田裕資

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