ヴェネツィア・ビエンナーレを制した巨大アート、「6対の手」が語るものとは

作品「ビルディング・ブリッジズ(Building Bridges)」 PH. Halcyon Art International

11月24日まで開催中の「第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展」で、あるイタリア人造形作家の作品が圧倒的な注目を集めている。Forbes Italiaより翻訳許諾を得たので、以下転載する。


ヴェネツィアでは5月上旬から、期間限定ではあるが、ある印象的な作品が話題となっている。ソーシャルメディアをポジティブな反響に溢れかえらせ、国際的なメディアでも繰り返し報道するこの「橋」、あるいは「彫刻」とは。

手がけたアーティストは、ロレンツォ・クイン。アカデミー賞受賞俳優、アントニー・クインの息子でもある。クインは、世論を喚起する強いメッセージを持ったおごそかな作品で知られる造形作家だ。

彼は、2年前の「ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展2017」でも、気候変動への世論喚起を訴えた巨大な2つの手からなる作品「サポート(Support)」を発表した。この作品はカナル・グランデに面した「カサグレドホテル」を支えるように展示され、会場を沸かせた。


作品「サポート(Support)」、 ロレンツォ・クイン

そして今回、「ビルディング・ブリッジズ(Building Bridges)」という作品を通して、人間の6つの普遍的価値である「愛」「友情」「知恵」「助け合い」「信頼」「希望」を表している。この作品は、6対の手を模した造形作品がひとつの橋を成し、「共同体は人と人との助け合いがあってこそ大きな目的を成し遂げられる」ことを訴えている。

対の手が指を絡ませてしっかりと握り合う形で示される「愛」のほか、やはり対の手がしっかりつかみ合う「友情」、老人の手と若者の手が軽く触れ合う「知恵」、対の手のひらがしっかり合わさった「助け合い」、子どもの手が大人の手をしっかりつかむ「信頼」、そして、対の手の指が軽く交差し合う「希望」。

ヴェネツィアのアルセナーレ地区に設置された本作品の規模は15m×20mと巨大だ。ビエンナーレの公式作品ではないものの、ビエンナーレ開始数日後でそのシンボル的作品となった。

ローマで生まれ育ったロレンツォ・クインは、現在、複数の個展が開催され、国際的に知られるアーティストだ。ハルシオンギャラリーの個展は、ロンドンの3拠点、上海1拠点で開催された。その他ロンドン、ムンバイ、上海、バルセロナ、香港、バーミンガム、ドーハと、世界の大都市で彼の作品が公に展示されている。
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翻訳=大村紘代 編集=石井節子 写真=Forbes Italia提供

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