日本を「充実した学校給食制度」を持つ国、というポイントから論じた米国発のある記事がある。「日本の学校給食に他国が赤恥をかく」と題した“The Atlantic City Lab(アトランティック・シティラボ)”のブログ記事だ。
実はこの記事の公開と同時期、米国は「低所得家庭の子どもを対象とした学校給食提供」予算の削減を検討しており、これは、児童に健康的な食事を与えることを重要視する日本と大きな対照をなしている。米国が「子どもに食事を提供することが学業成績の向上につながる十分な証拠がない」と主張する国である反面、日本は、子どもに手作りの食事を与えることの大切さを一貫して信じている国なのだ。
写真:Japan Inside
日本の学校の94%で、1000万人以上の小中学生が給食を提供されている。日本の給食は温めなおしたカフェテリアのランチとは真逆を行く内容だ。毎日、学校の調理スタッフがいちから料理をつくり、学校の敷地内で栽培され生徒たちが世話をした野菜が、日々のメニューの材料になっている。このメソッドにより、子どもたちは幼い頃から「望ましい食事のとり方」を学習することができる。
食育、そして栄養教諭という「特別な先生」
日本の学校給食がとくにすぐれているところは、ランチタイムを「休憩の時間」ではなく「教育の時間」と見なしていることだ。昼休みは子どもたちに食事の配膳、テーブルマナー、掃除といった重要なスキルを教えるための時間だ。日本政府は、子どもに望ましい食習慣を教える責任を真剣に受け止めている。先の「アトランティック・シティラボ」の筆者ミミ・カークは次のように書いている。
「日本では『Shokuiku(食育)』という、食と栄養の教育を示す用語がある。摂食障害の子どもが増えたため、日本政府は2005年、食育に関する法律を制定し、学校が児童に望ましい食事選びの教育をほどこすことを奨励した。さらに2005年、政府は栄養の指導と管理をつかさどる『栄養教諭』を学校に配置する方針を定めた。こういった教員が在籍する小中学校はごく一部にすぎないが、調査によると、登校率の向上から残飯の減少まで、プラスの効果が示されている」
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児童は全員、「給食」という授業に、しっかりと準備を整えてのぞむ──繰り返し使える箸、布製のランチョンマットと口をふくナプキン、カップと歯ブラシを用意して。
教師もまた、わかりやすい手本を示し、子どもが質問した場合にそなえるために、教室で一緒に座って食べる。食事がすむと、全員が歯を磨き、今度は掃除タイムだ。教室、廊下、玄関、トイレなどを清掃する。
この学校給食の成功は、給食から安直に手を引こうとする米国など、他国にとっても良い手本となるはずだ。うまく実行できれば、子どもたちにエネルギーが充電されて、午後からの授業の反応がよくなり、生産性が上がるだろう。記事によると、学校給食には次のような影響力もある。
「次世代を担う子どもたちに健康的な食習慣と味覚を持たせ、食べ物の大切さを理解させる。また、キッチンでの作業、効率的な配膳、掃除の徹底といったスキルを育むこともできる」