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2019.10.29 11:00

テレビCMを放映したからこそ見えてきた デジタル広告ではリーチできない顧客層

左:ラクスル取締役CMO/広告事業本部長 田部正樹氏 右:ラクサス・テクノロジーズ代表取締役社長 児玉昇司氏

定額でブランドバッグを使い放題できる、シェアリングプラットフォームアプリ「Laxus(ラクサス)」の成長が目覚ましい。その起爆剤となったのは「ラクスル」が制作したテレビCMだった。テレビCMだからこそリーチできる顧客層の存在は大きかったという。


「テレビCMについては、この2、3年、検討していました。でも、いろいろ話を聞いてみると、2億円を投じたけれど効果がない、問い合わせの電話もほとんどかかってこなかった、などというケースもあり、リスクが大きい、となかなか投資に踏み切れませんでした」

ラクサス・テクノロジーズの児玉昇司社長はこう振り返る。

同社が手がけるのは、毎月6,800円という定額で高級ブランドバッグが使い放題のサブスクリプションサービスである。事業を開始した2015年当時は、日本国内はおろか、世界でも類のないサービスだった。

「ですから、とにかく認知を高める必要がありました。世の中になかったサービスなので、なかなか価値が伝わらないし、ウェブ広告では跳ね返されてしまうのです」

テレビCMには関心があったが、前述のように高額なうえに効果測定が難しい。大手広告会社とも話し合いを重ねたが、費用対効果への不安は拭えなかった。

「そもそも、クリエイティブの中身だけでなく、どの番組に当てるか、時間帯はどうか、放映地域はどうするかなど、変数が多すぎて、仮説が立てづらいということもあります。その点、ラクスルのテレビCM制作・放映サービスは、変数の整理までやってくれて、しかも低料金で流せる。スタートアップにとっては、うってつけの条件でした」(児玉氏)

今年、第一弾として福岡でCM放映をしたところ、アプリのダウンロード数は一気に10倍になった。認知度向上は明らかだったが、数値が伸びただけでなく、これまでは捉えることができなかったターゲットにもリーチできた。


最初のテレビCMは会員数を増やす起爆剤に

「例えばファッション系の専門学校生などは、ブランドバッグを持ちたいけれど、持てなかった層。でも、レンタルなら利用できるし、利用したい。こういう層はウェブではリーチできず、テレビだからこそ訴求できたのです」(同)

シンプルに伝えなければ広範囲に訴求できない

ラクサス・テクノロジーズが顧客に提供する価値は、憧れの高級ブランドバッグが安価で借りられ、しかもいろいろな種類を「とっかえひっかえ」使うことができる、ということだ。

しかしその根底には、エシカルな社会の実現という考え方がある。

「高いものを安くして、使いやすくする。そんな“使う手段”を一つ提供するというところからビジネスがスタートしましたが、そのことで実現したいのは、社会課題を解決することなのです。Laxusを使えば焼却されるバッグが一つ減ります。それこそが、私たちからの大事なメッセージなんですよ。欧米ではすでに捨てない消費社会への変化が始まっていますし、日本でもものを持たないスマートな生き方への関心が高まり始めていると見ています」(児玉氏)

Laxusのビジネスがユニークなのは、自らバッグを在庫として持ち貸し出すだけでなく、ユーザーが使っていないバッグを同社に預け、それを貸し出す、という文字通りのシェアリングも行っていることだ。

なるほど、そんなLaxusのユーザーが増えれば、消費のありようが変わり、ひいては社会が変わっていくイメージがわく。

とはいえ、認知を広めるためのテレビCMでは、より端的に利便性や利用価値を伝える必要がある。

「その意味では、CMの第一弾で認知は広がりましたが、広告表現としては、もっとシンプルに伝えなければならない、という反省があります。それを踏まえて、年内に第二弾の放映を考えています」(同)

ラクスルのテレビCM事業を統括するラクスル取締役CMOの田部正樹氏は「ウェブと違って不特定多数を対象にするテレビの場合、“早い”“安い”“簡単”というようなシンプルなメッセージでないと広範囲に訴求できない、という難しさがあります」と指摘する。

「リピートしてみたら、こんな価値があったんだ、という発見はあると思いますが、新規の場合はどうか。“知らない人に使ってもらう理由”は、必ずしも本来の価値と一致しません」(同)

初回のチャレンジを通して得たさまざまな気づきを、どのような広告展開に昇華させるか。Laxusの次の手が楽しみだ。

ラクスルとGOが提携 エモーショナルな要素を強化

ところで今回のLaxusのテレビCMは、ラクスルのパートナー制作会社として、クリエイティブを元博報堂の三浦祟宏氏を中心に設立された広告企画会社GOが担当した初めてのケースだった。ラクスルとGOはその後、正式に提携を発表し、スタートアップに特化したテレビCM制作を積極化する。

GOがクリエイティブを担当し、ラクスルはメディアプランニングとマーケティング支援を受け持つという協業だ。

「BtoBの会社と違って、個人消費者を対象にするBtoCの場合、CMの面白さとかエンタメ性、エモーショナルな要素がないと目に止まらないということがあります。その意味で、GOと協業したラクサスのCMづくりは私たちも勉強になりましたし、今後もいい補完関係で事業を進められると思っています」(田部氏)

テレビCM制作の事業パターンが増えたことで、さらにスタートアップの熱い注目を浴びそうだ。

協業で生み出すよりクリエイティブでより効果的なテレビCM



9月、ラクスルはThe Breakthrough Company GOと提携し、テレビCMを通してスタートアップの急速な成長を支援するマーケティングサービス「はじめてのTVCMプラン」および「CMO代行プラン」の提供開始を発表した。

マーケティングに強みのあるラクスルと、博報堂出身の三浦崇宏氏らを中心としてクリエイティブに定評のあるGOが組むことで、より効果的でよりかっこいいテレビCMを提供しようというプロジェクトだ。

「はじめてのTVCMプラン」では、2,000万円〜の広告予算で、制作からメディアバイイングまでをカバー。「CMO代行プラン」では、マス広告を中心に、マーケティング戦略全体をプロデュースする。


児玉昇司◎ラクサス・テクノロジーズ代表取締役社長。シリアルアントレプレナー。健康食品、英会話、広告といったビジネスを経て、ラクサスは自身4度目の起業となる。2015年にシェアリングプラットフォームアプリ「Laxus(ラクサス)」をローンチ。会員数は32万人、流通総額は420億円を突破した。

田部正樹◎ラクスル取締役CMO/広告事業本部長。大学卒業後、丸井グループに入社。主に広報・宣伝活動などに従事。2007年テイクアンドギヴ・ニーズ入社。営業企画、事業戦略、マーケティングを担当し、事業戦略室長、マーケティング部長などを歴任。14年にラクスルに入社、16年10月から現職。

ラクスル
https://tvcm.raksul.com

Promoted by ラクスル / text by Toshihiko Masugi / photographs by Mizuaki Wakahara(D-CODE) / edit by Miki Chigira

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