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2019.10.18 12:00

「インスタグラマー」をやめたまつゆう*が案じる、ステマ問題とインフルエンサーの行く末

クリエイティブ・プランナー、ブロガーのまつゆう*(写真=小田駿一)

「インフルエンサー」という現象は個人の生き方やあり方をどう変えたのか──。

発売中の『Forbes JAPAN』最新号とForbes JAPAN Webでは「個の時代」を象徴する現象として、インフルエンサーについて特集している。

本特集のアドバイザリーボードをつとめたクリエイティブ・プランナーでブロガーのまつゆう*こと松丸祐子は20年にわたり、インターネットの世界で生き抜いてきた。インスタグラムで33万のフォロワーを抱え、「インフルエンサー」と呼ばれていたが、昨年末、彼女はインスタグラムをアカウントごと削除した。

「最初は自分の趣味で自由に投稿していました。徐々に仕事として素敵なパーティやイベントに呼ばれるようになり、光栄なことでした」。しかし次第に増え続けるPR投稿に、「本当に自分の言葉や表現で伝えられているか」と悩むようになった。「インフルエンサーをめぐる環境に、心が追いつかなくなってしまったんです」と振り返った。

インスタをやめ、noteに挑む。インターネット舞台に活動20周年「まつゆう*」の強さと葛藤

あれから10ヶ月。「インスタグラム」をやめたまつゆう*から見たインフルエンサーのリアル、彼女自身が見出した新境地とは。

──インスタグラムは日々の生活にも、収入にも直結していたと思います。昨年末にやめてから、どのような変化がありましたか。

インスタグラムをやっていた頃は、タイムラインやストーリーズを見ることが多いので、常に人に会っているように錯覚していました。パーティに呼ばれるインフルエンサーたちと仲良くなることが多かったので、なんとなく「食事に行こう」となって、食事会が多かった記憶があります。

当時は、自分はクリエーターではなくなってしまっているという認識が自分の中でもありました。じゃあ職業は何なんだろう、と考えたら、「何もやってないなぁ」と。もうちょっと「まつゆう*」の主軸をちゃんとしないと、40歳になったのに何やってるんだろう、と思っていました。

いつの間にか「インスタグラマー」としてのまつゆう*のイメージが広まっていき、ウェブサービスのプロデュースや、プロダクトのプロデュース&デザインなどのクリエイティブな仕事が減っていきました。デジタルに強い女の子というイメージから、「インフルエンサー」というイメージに大きく変わってしまいました。自分はクリエーターではなくなってしまっているという危機感が自分の中でもありました。

インスタグラムをやめたことで、いろいろなことを考えたり、身の回りのことをする時間が増えました。カルチャーに触れる時間も増えました。ここ数年、触れる機会が減っていた映画やアニメを見るインプットの時間が増え、自宅で考えていることを文章にまとめるなど、アウトプットをする時間もできました。

「インスタグラムに投稿する」以外の仕事やオファーも幅広くいただけるようになりました。フィンランドへの旅のオファーや、旅連載や、コラム執筆の依頼や、コンテストの審査員や、映画や新譜のCDへのコメントを書くお仕事など。本業であるプランナーの仕事もあり、とても充実してきました。

インスタグラマー時代は「キャスティングされる側」だったのですが、また、コンテンツやものをつくる側に戻ってきた実感があります。

インプットとアウトプットのバランスがよくなりましたね。原稿執筆やクリエイティブなアウトプットに没頭して、頭から「プシュー」と煙が出るくらい集中できて、それが終わったらまた映画を見たり、美味しいご飯を食べに行ったりとインプットをして、それをまたアウトプットに生かしています。

noteの本でも書きましたが、何か毎日アウトプットし続けるっていうことを習慣化することがすごく重要だと思っています。書く、創る、人に見せる。これをやり続けることが、誰にとってもいいことだと思うんですよね。インフルエンサーでなくても、ビジネスパーソンも学生さんもおじいちゃん、おばあちゃんも。今まさにみんな、自分がメディアとなって発信できる時代だと感じます。

ネットの世界では、発信をしないことは「いない」も同然

インターネットの世界では、発信をしないということは、いないも同然。インターネットの世界で存在するには、何かで発信していかなくてはいけません。

インスタグラムをやめて年末から始めた「note」は素の自分を出せる、アウトプットの場所なのかなっていうのを、最近感じるようになってきました。

noteに関連して、今年8月、友人でブロガーのコグレマサトさんとともにnoteの指南本を出版しました。『noteではじめる 新しいアウトプットの教室』(インプレス)です。毎日原稿を書いて、頭を使って、執筆期間を楽しく駆け抜けました。



noteの使い方をnoteディレクターさんに教わっていくうちに、「noteの本を書きたい」と思い、とんとんと話が進み、2月ごろにはもう出版が決まりました。最近、いろんな人がnoteを始めるようになって、嬉しいです。

「フォロワー数至上主義」ではないnoteの世界が面白いです。noteでは1日1万ぐらいの数の記事が上がるのですが、フォロワーが大勢いても、「スキ(いいね)」がなかなかつかないこともあれば、フォロワー数人の方でも記事内容次第で1000個の「スキ」がつくこともあります。他のブログサービスやSNSと違って、会員以外でも「スキ」をつけることができるので、「いい記事を書けば読まれる」という世界が面白いですね。

また、noteはステルスマーケティング(ステマ)禁止なんです。広告枠もなく、コンテンツを純粋に楽しむ環境になっていますね。
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文=林亜季、写真=小田駿一

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