「インスタグラマー」をやめたまつゆう*が案じる、ステマ問題とインフルエンサーの行く末

クリエイティブ・プランナー、ブロガーのまつゆう*(写真=小田駿一)




──インフルエンサーをめぐるステマの問題について、以前から懸念を指摘されていました。

今回の「TOP INFLUENCER 50」企画でアドバイザリーボードとして最も悩んだのが、まさにステマの問題です。クリエイティブ・プランナーとしてインフルエンサーを起用する側でもありますし、起用される側でもありましたから、インフルエンサーにどういった形でお金が支払われているかはよく理解しています。

私の場合はプロモーション投稿をする際は広告であることを明示するために「#PR」と「#まつゆうPR」というハッシュタグを必ず入れていました。いただきものには、関係性を明示し、「#GIFT」とつけていました。

例えば、フォロワーが多いとされるインフルエンサーが企業やブランド主催のパーティーに出席し、ロゴの入ったボードの前で写真を撮ってプロモーション投稿するというお仕事があります。人にもよりますが、「フォロワーの人数×3円」くらいが相場と言われています。

お金をもらいながらプロモーションと明示しないのはNG

ただ、お金をいただいて出席しているにも関わらず、広告主側から必須でお願いしない場合は、プロモーション投稿であるということを明記していないインフルエンサーが少なくありません。それはステマに当たるのではと考えています。今回、最も難しかったのはこの点です。多くのフォロワーさんを抱えていても、プロモーション投稿と明示しないのはNGだと思ったからです。

勘違いされている方も多いと思うのですが、ステマというのはステルスマーケティングの略なので、「広告だと気付かれないように宣伝を行うこと」です。宣伝すること=ステマではないので、クライアントとの関係性が投稿の中でクリーンに明示されていれば、問題ないと思います。「お車代」「ギャランティ」と名前は違えど、金銭のやり取りが発生しているのではれば、それを明示しなくてはステマになってしまいますよね。

今回アドバイザリーボードを担当するにあたり、周囲の有識者の方々に話を聞きました。やはりプロモーション投稿で、広告主との関係性を明示しなければステマに当たると5人中5人が話していました。

トップインフルエンサーになると、投稿自体にお金がついているというよりは、自身がブランドのアンバサダーであったり、自分が手がけているブランドの投稿であったりする場合が多いので、逆にルールを守って投稿されている方が多い印象です。

スマホ自体もプレゼントされている

起用する側としては、「投稿にPR表記を」とお願いしても、明記してもらえないことがあります。実際のところ、PRと入れることで「宣伝しています」感が出てしまうというインフルエンサー側の気持ちと、企業側の「できればPRとつけて欲しくない」という思いが重なって、このようなことが起きていると思います。実際に「#PR」を消してしまう方もいます。また、一度プロモーション投稿をしても、数ヶ月すると消してしまう方も少なくありません。投稿期間の約束をとりつけていないので、仕方ないのかもしれませんが。

パーティー以外にも無償で旅行に連れて行ってもらったり、服やアクセサリーをいただいたりして投稿していることもありますし、投稿しているスマホ自体も頂き物だという方もいたりしますね。

──そういった投稿をしても、消費者の共感は得られにくく、フォロワーさんにはわかってしまうのではないでしょうか。

そうですね。ユーザーさんも、「これはきっとプロモーションだろう」とわかる方も増えているのではと思います。一方で「インフルエンサーが紹介しているから欲しい」という方もまだまだ多数います。インフルエンサーが自分で買って「良い」と思って紹介しているのか、それともお金をいただいて紹介しているのかはしっかり明記するべきだと思います。それでも、「情報をありがとう」と喜んで参考にしてくれるファンの方もいると思います。ステマをしてしまうということは、結果的に大切なファンを騙すことになってしまうんですよね。

例えばお金をいただいて、化粧品の新商品を先に体験させてもらった場合、または無償で体験させてもらった場合、どのように投稿すればいいのか。パーティーに呼ばれて「お車代」としてギャランティーをいただいた場合はどう投稿するのか。業界としてしっかりルールやガイドラインを設ける時期にきているのではないでしょうか。

もしかしたら、インフルエンサーと言われる方々や、事務所側もどこからがステマに当たるのかわかっていない場合もあるのかもしれません。「みんな書いてないしいいや」という空気感があるのかもしれませんが、影響力を持つことはそれだけの責任が伴うことだと思います。
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文=林亜季、写真=小田駿一

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