クリエイターの本棚

『ニュータイプの時代』(ダイヤモンド社)

旅するように、本を読む。一冊の良書は好奇心を刺激し、読み手を新たな書へと駆り立てる。

この連載では、新規事業開発や広告制作を手がけると同時に、本をこよなく愛する筆者が、知的欲求を辿るように読んだ書籍を毎回3冊、テーマに沿って紹介していく。第3回は、「時代の変化に適応する」ための示唆に富んだ3冊。


20世紀の後半から21世紀の初頭にかけて、経済が右肩上がりの時代は待っていれば坂の上から自分のもとに仕事が転がり落ちてきた。仕事という果実を「リンゴ」に例えるなら、リンゴを拾う人、運ぶ人、皮を剥く人、切る人、盛り付ける人という具合に、効率化が追求され、それぞれの持ち場において再現性の高い作業ができる人材が優秀とされてきたのではないだろうか。

しかし、坂道を登った今、リンゴは転がってこない。つくればモノやサービスが売れる時代に重宝されていた、従順で、論理的で、勤勉で、責任感の強い人材が、“オールドタイプ”として急速に価値を失っていると、『ニュータイプの時代』(ダイヤモンド社)を通じて山口周氏は説く。

どうすれば手際よくリンゴを拾って盛り付けられるかがわかっていても、肝心のリンゴがなければ、無力に立ち尽くすのみだ。では、どうすれば果実にありつくことができるのか。リンゴがないのであれば、バナナだってブドウだっていい。

新しい果実をつくることができる人間が生き残るのだ。そうなると、既存の枠組みの中で正解を出せる人材ではなく、自由で、直感的で、わがままで、好奇心の強い人材が、今後大きな価値を生み出し、評価され、本質的な意味で「豊かな人生」を送れるようになるだろう。

そうは言っても、「言うは易く、行うは難し」と言うもの。半世紀以上にわたる年月をかけて硬く固まった鋳型の中では、自分が変わりたいと思っても、実際はなかなか変わることができないというものだ。

その際の道しるべとなるのが、田川欣哉氏による『イノベーション・スキルセット』(大和書房)だ。



これからの時代を牽引するのは「BTC型人材」であると、同氏は主張する。「B」はBusiness、「T」はTechnology、「C」はCreativityだ。

リンゴが転がってくる時代は、それぞれの持ち場で専門性を磨き、分業に勤しんでいれば安泰だった。しかし、これからの時代は、これまでにない創造性で、先進技術を駆使しながら、稼ぎになる果実を生み出していかなければならない。

そのために、まずはBTCいずれかで得意な領域をつくり、そこから片足を出すように他の領域に挑戦する。その際に、別の領域が得意なメンバーと協業することを、田川氏は自身が代表を務めるデザイン・イノベーション・ファーム「Takram」で実践する。

文=川下和彦

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