ニュースサイトDigidayは10月15日、アップルのブラウザ「Safari」に新たに実装されたプライベート・ブラウジング機能が、ユーザーのサイト訪問数の測定を困難にし、メディア企業から課金の機会を奪う可能性があると指摘した。
グーグルのChromeにも「incognito mode」と呼ばれる匿名化機能があるが、メディア側はincognito modeなどの匿名モードでの閲覧を包括的に禁止することが可能だった。
しかし、Safariのセキュリティ機能はメディア側にブラウザが匿名モードで作動していることを検知されることを防止する。Digidayの記事によると「Chromeの匿名モードで、ニュースサイトのBoston Globeを閲覧した場合、一定の記事本数を閲覧した場合、課金コースへの誘導が可能だった。しかし、Safariの最新版を利用した場合は、サイトが閲覧回数のカウントを行えず、課金への誘導が行えない」という。
近年は多くのインターネットメディアが無料での閲覧回数を制限し、一定の回数に達した場合、料金の支払いを求めている。しかし、Safariの最新版の匿名モードを利用した場合、メディア側が無料の閲覧を拒否できなくなるのだ。
米国ではPCブラウザのシェアではChromeがSafariを上回っている。しかし、モバイルにおいては、Safariが主要なブラウザとなっている。アップルユーザーはコンテンツに対して気前よく対価を支払うことで知られるが、Safariの新機能はメディア企業に新たな頭痛の種をもたらすことになる。
DigidayによるとSafariの最新版はリリースされたばかりであり、現状ではさほどの被害は表面化していないという。しかし、一部の有料メディアの運営者は、最新版のリリース以降に、売上の低下が起こったと報告したという。
この事態が続けば、メディア側はさらに強固なシステムを導入し、無料で閲覧できる記事本数に制限を加えるかもしれない。しかし、この動きはカジュアルな閲覧が有料のサブスクリプションにつながる、自然な流れを阻止してしまう。
ここ数年のデータ流出騒動が発端となり、プライバシー保護は重要な課題となった。それに次ぐ形で浮上したのが、プライバシー保護とマネタイズのバランスをどうやって維持するかという問題だ。アップルやその他の企業はユーザーのプライバシー保護を進めてきたが、それが思わぬ形で、メディア企業のビジネスモデルに影響を与えることになった。
1つだけ言えるのは、プライバシー重視のトレンドはもう後戻りできないことだ。メディア企業は新たなソリューションを開発するしかなさそうだ。