神戸市は、10月1日に、首都圏でのプロモーションに携わる東京勤務の人材を新たに採用し、「エバンジェリスト」という役職名を与えた。エバンジェリストとは、特に役所の職種としては聞き慣れないと思われるだろうが、IT業界では長年、会社のPRにおいて肝になる専門職をこう呼んできた。
商品の認知度を高めるのは「広報」、商品を売るのは「営業」。しかし、商品がユーザーにもたらす未来や世界観を伝えるのが「エバンジェリスト」だ。そのため、会社という枠を飛び出し、テクノロジーの最新事情について講演したり、ウェブや雑誌などで記事を執筆したりする。
神戸市は、「街の魅力」を「ITの商品」になぞらえた。神戸に住んで働いたり、この街を訪れたりする人たちに、どんな「未来」を示すことができるのか。まさにそんな考えのうえに、エバンジェリストという役職を設定したのだ。
応募をかけると、たった1名の採用枠にもかかわらず、721人の応募があった。優秀な人材が多数おり、選考中に枠を2名に増やした。今回、エバンジェリストとして採用された2名を紹介しよう。
顧客に刺さるかは「見せ方」だ
まず、栗山麗子(45歳)。彼女は、小麦粉やパスタを販売する食品メーカーである日本製粉から転職してきた。日本製粉では、「ニップンのアマニ」と呼ばれる近年の大ヒット商品を、世に送り出した立役者であった。
ニップンのアマニとは、元来はサバやサンマといった青魚からとれる健康成分のオメガ3脂肪酸を豊富に含む、亜麻という植物の種子を原料とするドレッシングやマヨネーズなどの一連の商品だ。
今となっては、アマニの市場は、同業メーカーがこぞって参入してきて100億円規模の市場に成長したが、栗山は、10年以上前から、社内でも誰からも見向きもされなかったアマニに着目、自らテレビショッピングなどに出演したりして、アマニの伝導に努めた。すると、月に数ケースしか売れなかったサプリメントが、日本最大のテレビショッピング番組でヘルスケア部門のトップに立ったのだ。