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“新しい時代の愛車”を具現化したコンセプトカー LQと、開発責任者の井戸大介

トヨタ自動車は、“新しい時代の愛車”を具現化したコンセプトカー「LQ」を発表。2020年6月には、東京都内の公道をLQが走る試乗体験ツアー「トヨタ YUIプロジェクトTOURS 2020」を開始する。ドライバーに寄り添う独自のAIエージェントYUIや高度な自動運転機能を備えたLQは、トヨタが描くモビリティの未来を提示する。


「愛車」という言葉は、人が、クルマを単なる移動手段を超えた存在として認知してきたことを端的に示している。しかし、モノと情報があふれる現代において、人間とクルマの関係はかつてとは変わった。さらには、自動運転などの最新のテクノロジーがモビリティに革命を起こそうとしている。新たな時代に、人はクルマに愛着を感じることはできるのだろうか。

トヨタが発表したコンセプトカーLQは、その問いにひとつの答えをくれる。“新しい時代の愛車”を具現化したLQは、AIや自動運転など同社の最新技術が可能にする、近未来のモビリティを提示する。市販化の予定がないコンセプトカーだが、開発には3年の月日を要した。

LQを特徴づけているのが、AIエージェントの「YUI」だ。YUIは、ドライバーに寄り添い、特別な移動体験を提供する“パートナー”として開発された。ドライバーの表情や動作を常に感知して、感情や眠気などを推定しながら、会話を通じたコミュニケーションだけでなく、シート・車内照明・空調・フレグランス・音楽などの車内環境を調整し、ドライバーが覚醒/リラックスしやすいようにサポートしてくれる。ドライバーはまるで、長年連れ添った相棒のようにクルマと接しながら、快適に移動できる。



米国の自動車技術者協議会(SAE)が定める技術水準「レベル4」に相当する、高度な自動運転技術を搭載し、安全安心な移動をサポートする。乗降場所と駐車場間を自動で入庫・出庫する無人自動バレーパーキングシステムは、駐車が苦手なドライバーの負担を軽減するだけでなく、身体の不自由な方や妊娠中の方にとっても重宝されるだろう。両隣の車から20cmの精度で駐車できる本技術は、駐車場の省スペース化にも貢献しそうだ。

このLQで、お台場・豊洲周辺の公道を走る試乗体験ツアー「トヨタ YUIプロジェクトTOURS 2020」が、2020年6月から9月まで開催される。

ファンタジーではない、リアリティの追求

開発責任者の井戸大介は、「新しい技術でお客様の体験や行動範囲を広げ、もう一度、新しい時代の『愛車』と呼んでもらえるように、との想いでLQの開発をスタートしました」と語る。

LQのベースとなった「TOYOTA Concept-愛i」は2017年1月にコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)で披露された。すでに自動運転やAIアシスタントに関連した技術を披露する企業は多かったが、映像やテキストを用いてイメージを伝えることにとどまるデモがほとんどだったという。そんな中、トヨタはドライブシミュレーターにAIを組み込み、自動運転とAIエージェントのコンビネーションがもたらす未来のドライブを実際に体験できるデモを用意した。「お客様との距離感を大事にしたいからこそ、リアリティにこだわってきました。LQはファンタジーではないのです」と井戸は強調する。実際に東京の公道で行われるLQの試乗体験ツアーも、リアリティを追求する同社の姿勢を反映している。



トヨタにしかできないAIアシスタント

AIアシスタントというと、Amazon AlexaやGoogleアシスタントなどがすでに家庭で多く使われている。井戸は「クルマでしかできないことがあります。それがほかのAIアシスタントとの差別化になると考えています」と話す。

クルマでしかできないことのひとつが、「覚醒度推定」機能だ。運転手にとって眠気は大敵だが、すでに眠くなってしまってからの対策では遅い。LQの車内には複数のカメラや3Dセンサーが搭載されていて、ドライバーの覚醒度を推定、ドライバーが眠気を感じる約15分前に察知することができ、覚醒を促す様々な働きかけを行う。この覚醒度推定には、ディープラーニングの技術が用いられている。

YUIは、個人嗜好や感情の推定も行う。個人嗜好推定により、YUIはドライバーが興味を持つ話題を提供できる。ドライバーがスポーツ好きなら、週末のラグビーの話題をふる。楽しい会話を続けることでドライバーは眠気から遠ざかり、目的地まで安心してドライブできる。

また、感情推定により、ドライバーがどのような道を走っているときに気分が良いのかを学習することもできる。「より早く目的地にたどり着ける道を案内することは、他社のナビでもできるでしょう。でも、ドライバーが幸せになれる道を案内できるのはYUIだけです」と井戸は笑う。



シートを通じたインタラクション

推定した覚醒度や嗜好、感情を基に、クルマが人に対して行う働きかけを担うのが「HMI(Human Machine Interface)」だ。覚醒・リラックス誘導機能を備えたシートや、イルミネーションを備えたフロアマットやルーフを通じて、LQとドライバー間のインタラクションが実現する。

特にユニークなのはシートで、内部には複数のブラダー(小型エアバッグ)を内蔵する。眠気を感じているときは、ブラダーを膨らませて身体を「背伸び」した状態にさせ、覚醒をサポートする。一方、リラックス状態に誘導することも可能で、ブラダーを呼吸より少しだけゆっくりとした速度で動かすことで呼吸を整わせ、リラックスをサポートする。


<TOYOTA YUI Projectのティザームービー>

米国技術者の心を動かした「開発者の詩」

トヨタが持つ膨大な数の先端技術を、ひとつのクルマに凝縮。そこには当然のように、様々な困難が伴った。その中で特に印象的だったものとして井戸が挙げたのは、YUIのコンセプトにまつわるエピソードだ。

YUIの開発は米国の傘下企業が担当したが、「パートナーのような存在になるAI」というコンセプトはなかなか理解されなかった。パートナーという言葉の捉え方の違いもあるが、モノに魂が宿る、という日本的な感覚を、欧米の技術者と共有するのは難しかった。

彼らの考えを動かしたのは、「永遠と一瞬。」と題されたコンセプトムービーだった。LQの企画書の最後に、井戸は自身の想いを同名の詩にして添えていた。

「ひとりのとき ふと誰かとこの瞬間を共有したくなる/大切な人といるとき この瞬間を共有できてよかったと思う/もし、そこにクルマがあったら クルマも大切な思い出の一部になれるだろうか」

「人の記憶に残るのは、一瞬のシーンであり、その思い出を人は一生忘れずに生きていく。つまり大切なその一瞬がその人にとっての永遠になる、という意味です」と井戸は説明する。日本の開発チームはこの詩を映像化した。米国チームはそれを見たとき、「そういうことか」と膝を打ったのだという。

「愛車」の再定義と聞くと、テクノロジーの進化に抗うようなものを想像しがちだが、むしろトヨタは、これまで築き上げてきた「愛車」という概念を、先端技術によっていかに深めていくのかを目指したと言える。永遠と一瞬に寄り添うという役割は、かつてのクルマも、未来のクルマも変わらない、というのがトヨタの考えなのだろう。

試乗前からアプリを通じてAIに学習させることができる

2020年6月から開催される試乗体験ツアー「トヨタ YUIプロジェクトTOURS 2020」がユニークなのは、先行してリリースされるスマートフォンアプリを通じて、自分の趣味や嗜好を事前にYUIに学習させることができる点だ。初めて試乗するLQで、ひとりひとりに最適化され、自分の運転や性格なども知ったYUIと、一緒に走ることができるのである。試乗でもベストな体験を得られるだけでなく、体験ツアー参加者の協力を得た壮大な社会実験としての側面も見て取れる。クルマの進化を考える上で、非常に興味深い取り組みと言える。



井戸の語る未来の愛車

一瞬を永遠のものにしてくれるクルマが愛車ということは、これからも変わらないはずだと井戸は語る。大切な瞬間にこそ愛があり、その愛が生まれる瞬間、育まれる瞬間にこそクルマがあってほしい。そのシチュエーションを促すためにYUIが手助けをしてくれる。トヨタが描いた未来の愛車像の一端がここにある。

「愛車」という情緒的な価値を持つ言葉を、徹底したリアリティに仕上げることができるのがトヨタの強みだ。井戸は「お客様にはぜひ一緒に、新しい時代のYUIを作っていただけたら」と語る。2020年6月、LQが、私たちの暮らす東京を走る。私たちは、モビリティの未来をリアルに体験することになる。


井戸大介◎トヨタ自動車株式会社 トヨタZEVファクトリー ZEV B&D Lab グループ長。1997年にトヨタ自動車に入社し、Yaris自動クラッチ、MR-S SMT、LFA ASGなど主に駆動系制御システムの開発に従事する(特許出願21件)。LQ開発責任者。


「トヨタYUIプロジェクトTOURS 2020」
期間:2020年6月~9月(予定)
場所:東京都 MEGAWEB及びお台場・豊洲周辺の公道
応募方法:詳細は今後特設サイトに掲載予定
特設サイト:https://toyota-yuiproject.com/



上記の特設サイトでは、「トヨタ YUIプロジェクトTOURS 2020」の詳細、YUIおよびLQの開発者メッセージなどが掲載されている。試乗体験ツアーへの応募方法についても、今後こちらのサイトに掲載される予定だ。ぜひチェックしてほしい。

Promoted by トヨタ自動車 / edit & text by Takanobu Ozawa / photographs by Hiroyoshi Kimijima

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