印象的だったのは、ブレンディッド・ファイナンスが決して「収益性の低いビジネスを補助するためではない」というロックフェラー財団マネージングディレクター、ロレンツォ・ベルナスコニ氏の発言である。「収益も出し、かつインパクトも出す可能性が高い事業」に対して、投資資金が流れるように道筋を整えるのが役割で、資金調達が難しい初期段階をサポートすることが可能になる。こうした触媒的な資金(Catalytic Capital)が市場にチャンスを解き放ち、グローバルなインパクトをもたらす。
「社会的インパクト投資フォーラム2019」でのパネルセッション
アメリカのエコシステムには、これまでも社会的インパクトを創出するカタリストが多く存在してきた。ロックフェラーを始めとする財団もCatalytic Capitalの役割を標榜している。財団だけでなく政府系の公的機関が触媒となる資金を提供したり、税制面での措置を行うことでもイノバティブファイナンスの促進は期待できる。
日本でも今年6月末に開催された「G20大阪サミット」の首脳宣言において、「ブレンディッド・ファイナンスを含むその他の革新的資金調達メカニズム」が各国の共同の取り組みを高めていく上で重要な役割を担うことができると言及され、安倍総理のスピーチにおいては、「日本は、地球規模課題の解決に必要な資金確保のため、社会的インパクト投資や、休眠預金を含む多様で革新的な資金調達の在り方を検討し、国際的議論の先頭に立つ考え」であると明言された。
以前はソーシャルセクターが半数以上だった「社会的インパクト投資フォーラム2019」の参加者も、今年は金融関係者が多勢を占めた。今、日本社会でも多くのカタリストが出現している。よりスケールのあるインパクトを生み出すために、重要なのは適切な投資家を適切な機関につなげることだ。
そのためにも、セクターを超えたパートナーシップが求められている。日本でもイノバティブファイナンスのメカニズムは整いつつある。今、この市場にトライすることが、未来の社会に影響を与える投資を呼び込むチャンスなのだ。