チック・コリア独占インタビュー ジャズ界の巨匠、創造の源を語る

Leopolis Jazz Fest 2019で演奏するチック・コリアとザ・スパニッシュ・ハート・バンド(ウクライナ・リヴィウ、2019年6月)(Ruslan Lytvyn / Shutterstock.com)


──今、音楽界で起きている新しいことで、刺激を受けているものはありますか?

最近注目しているのはカマシ・ワシントンだ。私は先日の東京JAZZで彼と会った。彼のバンドは私たちが演奏した日の午後に出演していた。自宅に帰って彼の音楽をしっかり聞いたところ、素晴らしかった。また最近は、クラシック音楽を聞くことが増えている。今取り組んでいる新たな作品のため、バルトークやストラビンスキー、さらにはモーツァルトを聴き、オーケストラの音楽にどっぷりつかって学んでいる。

──ジャズは2019年の今も、時代に乗っているものでしょうか?

私はこうした総合的な発言は、あなたのように音楽について執筆する人々に任せている。しかし、私がツアーと観察を通じてみてきたものから言えることはある。それは、現在の創造性の状態と若い新人たちは非常に大きく、ダイナミックだということ。世間のメディアでヒットするものが、現実生活で最も大切なこととは限らない。私は、音楽と芸術は概して人々に生まれつき備わっているもの、これなしではやっていけないものだと感じている。

インターネットがあり、即座にコミュニケーションが取れる今、若いミュージシャンたちはユーチューブやアップル・ミュージックなどのサービスを通して深い間接的情報を得ることができる。新人はスタイルや形式についてよりコミュニケーションを取る傾向にあり、私が目にする学生や若手ミュージシャンの演奏は驚くほど変化に富み、面白い。音楽の創造的精神は非常に良い状態にある。私はただ、「ジャズ」という言葉については分からないだけだ。

──これはフォーブスのインタビューなので、ビジネスに関する質問を一つさせてください。「金持ちになりたければミュージシャンになりなさい」と言う人はいません。ジャズミュージシャンならなおさらです。成功するために、ビジネスの見地からしたことは何ですか?

働くことが嫌だと思ったことは一度もなかった。バンドで演奏しながら、長い間さまざまなプロジェクトに取り組んできており、それが嫌だとは感じていない。音楽家は、自分が与えるものによって何が返ってくるかが決まる。時には犠牲も生じる。

私が最近やっていたバンド「ザ・スパニッシュ・ハート・バンド」は9人によるフラメンコ音楽のアンサンブルで、大きなチームを抱えていた。私は、これをツアーにすると非常に高くつくだろうとずっと思い、実際にそうだったが、引き換えに非常に良い反響があった。それが本当に良かった。新しくて、元気の源となり、自分にとって楽しいと感じるものに心から取り組めば、報われるものだ。

──最後の質問です。インスピレーションと創造性を維持するために何をしていますか? 実はゴルフが好きだったり?

いや、私はゴルフとは全く縁のない人間だよ。水泳が好きで、毎日泳いでいる。私が主にインスピレーションを得ているのは音楽と絵画からだ。別の芸術面としてはグラフィックアーティストでもあり、絵の具や色鉛筆のコレクションを持っていて、常に絵を描いている。音楽作品を作っているときには、休憩時に自分の向かう方向に向けた抽象的なものを描いている。一つの創作活動は通常、別の創作活動に役立つ。説明しづらいが、芸術とはそういうものだと思う。

編集=遠藤宗生

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