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逆に、藤原がフォローしているのは、BBCやNHKなど世界のニュースメディア6媒体のみ。半年ほど前からはコメントもオフにして、ノイズを遮断。流れてくる情報、不要な横槍には目をくれず、情報は自分で見たり調べたり、リアルなネットワークを信頼している。

「人間ってフィルターの役目があると思います。例えば僕が友達に『これ面白いよ』っていうのは僕のフィルターを通っていて、逆に友達のフィルターで『ヒロシくんにこの人は紹介しない方がいいな』って考えてくれたり。インスタグラムのフォローもそういう役目はあるけれど、甘い。アナログで良質なフィルターをどれだけ持てるかだと思いますよ」

そして、「僕はインフルエンサーというか、フィルターかもしれない」という。雑誌で好きなものを紹介していた頃から、“藤原ヒロシフィルター”をかけたものだけを発信し、特に情報過多になった今、その目利きに頼りたいファンや企業が絶えないのだ。

投稿に言葉が少ない理由は、「押し付けるのも押し付けられるのも好きじゃない」という彼の思想からくるのだろう。そして、説明的に語るのではなく、いいと思うものはモノや音楽など、形にして届けている。



「無駄」が経済を動かす

情報源が雑誌だった頃と誰もが発信するようになった今では、情報の質が変わってきていると彼は言う。

「今と比べると、雑誌世代は情報が少なかった。だから、例えば好きなアーティストの一枚の写真から、なんの靴を履いて、部屋にどんな小物があるのか読み取っていた。情報に奥行きがありました。インスタでは細かく見ようとする間もなく、新しい情報がやってくる」

そうして奥行きが薄れたことは、彼がフィールドとする“ファッション”にも影響を与えている。

藤原からすると、いまファッションブランドと言われているものは「ライフスタイルブランド」なのだという。そして、「ファッションは、本当は意味がないもの。そこが見失われている」と言って、カルチャーの話をする。

「カルチャーは、『耕す』を意味するラテン語の『カレル(colere)』が語源。心を耕すことなんです。例えば、ユニクロの服が生きるのに必要だとして、重たい革ジャンも、ダイヤモンドも、なくても困らないけれど、そういうものが心を耕してくれる。こういう“大いなる無駄”が、実はすごく大事。それがファッションなのか食なのか、それはその人がバランスを取ればいいけれど。その無駄が、経済を動かしている」

こういうことを、客員教授を務める大学の講義では伝えているが、やはりインスタで主張することはない。でも「伝わっていると思いますよ」と言うし、彼が手がけるコラボが必ずといっていいほど行列を生み、オークションで高値で取引されることを思えば、とても納得ができる。



最後に、地元の伊勢からオファーがないのかと聞くと、「お断りしたかな。日本のためとか、伊勢のためとかというより、自分ローカルとは関係のないところで仕事がしたい」と言う。

なるほどと思う一方で、彼のセンスや審美眼が、ファッションやカルチャー以外の領域に広がったら、それこそ予期せぬ想像以上が生まれるのではないかと、勝手に期待してしまった。

文=鈴木奈央 写真=山田大輔

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